「NZ銃乱射事件」ウトヤ島、7月22日 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
NZ銃乱射事件
又しても同じ愚行が繰り返された。場所だけが代わり、蛮行は同じ。単独犯ということやアダルトチルドレンという共通点。なぜにこういうどうしようもない動物が育ってしまうのか、世界各国は真剣に究明すべきと強く感じる。
今作は実際に起きた事件に対し、被害者側からの視点でのモキュメンタリーの形式を取りつつ、ワンカット長回し撮影で進んでゆく。
或る意味パニック映画であり、カメラも撮される対象者の心情に寄り添ったような演出を施している。それは発砲音でカメラの揺れ でびくつく演出や、BGM効果音一切無いこと、あくまで主人公の視点のヨリの画角なので回りの出来事を俯瞰で観客に見せないことで、より緊迫感と焦燥感、不安と恐怖を共有させてゆく。
ターゲットにされた団体の特徴もさりげなく観客にアナウンスするように、リベラルの子息や、他人種構成、そして理論的な振る舞いや討論好きといった具合に、確かに白人至上主義達側が思うであろう『鼻持ちならない』グループとして特徴つけられている。
主人公の女の子の当初の落ち着きや銃撃をかわしながらの妹捜索は、その緊迫感と相俟って感情移入がしやすい。但し、時間が経つことによる冗長感、犯人はハッキリでて来ない(※全体通して、遠目で2回程登場のみ)ことへの苛立ち、何処に逃げているのか分らない迷走感で支配されてゆく。そしてラスト前のナンパ目的で参加したトルコの若者のよく言えば緊張感を解すユーモア、悪く言えば不謹慎な言動で観客の緊張感が緩和したところで、またもや乱射される銃声が響く。この銃声は鳴り響いている時間の方が圧倒的に多い。どれだけ銃弾を所持していたかがはっきりと理解出来る。初めには見えなかった死体が徐々に転がっていく風景も又リアルを感じさせる演出であり風景描写であろう。そして殺された妹を発見して、主人公の緊張は一気に弾け、同時に崖上からの射撃で殺されてしまう。ただ、疑問が消えないのは、あの死体は冒頭に喧嘩していた妹の顔だったのか?と・・・
そして、トルコ人が運良く逃げおおせたボート上で、懸命に看護する妹を目の当たりにして、その運命の皮肉さに深いため息をつくばかりのスタッフロールであった。“あなたの本当の色”を見せれば理解し合えるのか、それとも唯々、粛清なのか。あくまでも被害者の立場からの視点であり、監督の言葉である『真実は一つにあらず』ということならば、是非とも、加害者の背景も又題材にして欲しいと思うばかりである。そしてこの犯人は声明でも次々と自分の跡継ぎが現われると予言し挑発し続けている・・・