希望の灯りのレビュー・感想・評価
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スーパーマーケットというかりそめのユートピア
スーパーマーケットという閉ざされた空間をひとつの小宇宙に見立てるというアイデアは決して物珍しいものではないが、ルーティーンの繰り返しのような職場が、主人公に取っては自分を閉じ込めるのではなく、社会というものに繋がるための扉として機能していることに新鮮さを感じた。
一方で主人公に限らず、本作に登場する個人の「家」は一種の牢獄のように描かれている。「家」は孤独を色濃く感じる場所であり、彼らにとってスーパーマーケットは人と触れ合い、仲間意識を共有することができる場なのだ。
しかしやがてそのスーパーも、世の中の大きな流れの中にポツンと浮かんだ避難所のようなものであることが示唆されるのだが、だだっ広いところにポツンとある無機質なスーパーマーケットから豊かな人間ドラマを生み出し、オアシスのような温かみを感じさせてくれた監督の視点に、大きな魅力と希望を感じています。
何が言いたのかよくわからなかった
食品管理の倉庫で働く無口な新入りが職場の年上の女性に想いを寄せるが彼女には夫がいた。不倫泥沼の話しでもなく凄い展開が来るわけでもなく、物静かに淡々とストーリーが進んでいくのでボケーっと観て頭をすっからかんにするには丁度良かった。でもちょっとよく分からない映画だった
東ドイツに限らない、普遍的なテーマ
本作は、1989年東西ドイツ統一後の、旧共産主義東ドイツ側の人たちの日常と苦悩を描く。
長らく続いた冷戦の終結、という特定の背景はある一方、所謂「大衆」の代表のような、現場労働に従事する素朴な人たちの日常、という観点では、普遍的なテーマであるとも見えた。
印象的だったのは、スーパーマーケットの従業員たちが、仕事場を「家」「家族」のように捉えて働いている点だ。
職場の雰囲気は温かく、仲間の連帯感が強く、競争や対立よりも協力で仕事を進める。
これは、労働に希望を見いだしていた共産主義の良さの名残りだろう。
日本が近年急速に失ったものでもあるし、残念ながら、世界はあまりにも共産主義の悪口を言い過ぎたとも思う。
資本主義の効率化と競争についていけない人もいるし、そればかりが価値でもないのだ。
クリスティアンは、半グレ仲間から足を洗って真面目なスーパーマーケットの仕事に就き、同僚の年上女性マリオンに好意を寄せ、希望を見出す。
しかし、マリオンが既婚と知り、さらに彼女から冷たく当たられた日の夜は、いたたまれず半グレに逆戻り。
この不安定さがすごく人間らしいと感じた。
そして、半グレでも反社会でも、ある時小さな恋愛や人とのつながりから、まともな生活へと心を入れ替えられる可能性がある。
それが「希望の灯り」なのではないか。
最後は泣けてしまった。
派手なシーンは無いが、主演の好演をはじめ素晴らしい緊張感で撮影されている。
心が洗われる一作。
フォークリフト愛に溢れた映画
全編通じてフォークリフトが重要なキーアイテムになっていた。
でも従業員にとって、フォークリフトはパレットやカッターナイフと同じく単に仕事に必須のアイテムの一つのだけな筈で、何故フォークリフトだけが特別なアイテムになっているのか分からなかった。倉庫番にとっては憧れの花形アイテムなんだろうか。
後、互いに惹かれて来ていたとはいえ、呼鈴鳴らして無反応の家に無施錠の窓から侵入して、人の家を勝手にうろついてパズルをしたり女性のシャワーを覗いたりするのは気持ち悪いと思った。
元空き巣泥棒から全然更生出来てない感じで、せっかくお見舞い目的で来訪したのに覗き魔になってて、やはり入れ墨だらけの元犯罪者なんだなとしか感じなかった。
海と呼ばれる狭い生け簀の中で、自由に泳ぐ事も、満足に呼吸する事も出来ずにひしめき合っている魚が、この世の無常を象徴しているような気がした。
毎日顔をつき合わして、一つの家族のように働いていても、実際にはお互いを何も知らない事に孤独を感じた。
考えさせられる様な良いシーンも多かっただけに、前述の不法侵入シーンの必要性を感じず、そこが残念だった。
なんとも難解。 ムードはよく伝わったけど、内容は脈絡もなく意味不明...
少しの光
巨大スーパーでの品出しやフォークリフト作業、そこで交わされる従業員たちの会話や交流。きっとこの外や家庭よりもここは仲間と社会とつながる場になっているんだろうなと思った。主人公がバス運転手に「良い1日だった」と答えるシーンはとてもいいですね。彼にとってはこの日常がそう思える日々なんだなと。
ベルリンの壁崩壊から30年近く経っても、西側と東側ではインフラや賃金にも結構格差があるみたいですね。それは人の心にも禍根を残していると。
あと、ブルーノはマリオンの夫だったんではないかと思っている。やけにマリオンの旦那のこと詳しいし(暴力的だとか実は自分のことずっと話してたんでは)最後は主人公に託そうとしてたし。まぁ真相は分かりませんが。
オフ・ビート
無口な映像から受ける感情。
旧東ドイツの空気感は知らないが、
ちょっと暗くて寒くて堅い感じ。
そして無口なイメージ。
主人公は脛に傷を持つ青年クリスチャン。
表情は柔らかいが社交性があるわけではない。
スーパーマーケットの同僚たちは、
そんなクリスチャンを好青年として感じている。
国柄なのか土地柄なのかは知らないが、
あまり身の回りの深い所を話してこないし
詮索したりもしない。そういう人たち。
それが居心地の良さにもつながってくる。
無口な人ってのは、よく観察する。
それゆえ、表面的な会話よりずっと
その人の内面をよく知られる。感じられる。
しかも古参の従業員たちはみな
旧東ドイツ時代からの同僚で気心を知っている。
だからこそ、ブルーノが抱えていた闇を感じられなくて
深い悲しみに包まれてしまう。
映像表現からも、その人種性のようなものは
強く感じられる。
ドリーやパンは多用されず、
基本的にフィックスカット。(カメラは固定)
アングルは平面的で奥行きは出さない。
人物のカットは真正面から真後ろへの直線的な切り返し。
セリフ前後の間は、一般的な映画よりも長め。
この「間」が実に内容に合っている。
北野映画を思い起こさせる映像表現に近い。
だからこそ、観客は余計な映像情報を入れずに
登場人物の内面を読み解けられる。
無骨だが実に感情豊かな、
スーパーマーケット=家族のような温かい場所。
じんわり胸に染みわたる、とても柔らかい、いい映画でした。
これが日本のスーパーマーケット映画だったらどうだろう。
パートのおばちゃんの井戸端会議から始まる根も葉もない噂話。
表面的な仲の良さを装って、同僚を陥れる人間模様。
異性にほんの少し好意を持っただけで不倫話にまで膨らませる想像力。
そんな映画は見たくないなぁ。
なんとも評価のしづらい
仕事場を延々と舞台にしてるのがちょっといい。そして、薄暗いけどあの倉庫みたいな店内が美しくみえる。なんか倉庫でバイトした記憶が蘇って親近感もおぼえた。人間関係や雰囲気も悪くない。
ただ、個人的にどうしてもダメだったのが主人公のキャラ。家勝手に入ってウロウロするシーンはほんとどん引き。。完全なる変質者。職場恋愛で悩みすぎるのもキモいしどういう男だよ、と笑 そういう設定なんで仕方ないが、そこでちょっと気持ちがはなれた。
良い点もありながら、個人的に合わない部分もあった、なんとも評価のしづらいということで平均かな。。
日常の中の小さな喜び
淡々と
理想の職場
刺青を微妙に隠して大型スーパーで働ける寛容さが羨ましい限り、初心者でフォークリフトを運転する不安定さは経験があればハラハラ、ドキドキしてしまう場面でもあり、深夜帯だからこそ?の周りの緩さが和める優しさを感じてしまう。
フォークリフトの練習場面で"Son Lux"の「Easy」が流れるが「モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由」の主題曲でもあり、映画のジャンルが違うだけで曲の雰囲気も変わってしまう不思議な感覚。
無口な主人公に訳ありな過去がありそうなのは上半身の刺青や昔の友人で何となく匂わせ、マリオンやブルーノに関しては描かない難しい事情が?
クリスティアンの存在感がギリギリに危うさを誤魔化しているような、挙動不審に思える表情を含めた不安定さ。
日常
なんでもないようなことの良さ
タイトルなし
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