劇場公開日 2019年4月5日

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「東ドイツに限らない、普遍的なテーマ」希望の灯り らんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5東ドイツに限らない、普遍的なテーマ

2025年5月12日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

本作は、1989年東西ドイツ統一後の、旧共産主義東ドイツ側の人たちの日常と苦悩を描く。
長らく続いた冷戦の終結、という特定の背景はある一方、所謂「大衆」の代表のような、現場労働に従事する素朴な人たちの日常、という観点では、普遍的なテーマであるとも見えた。

印象的だったのは、スーパーマーケットの従業員たちが、仕事場を「家」「家族」のように捉えて働いている点だ。
職場の雰囲気は温かく、仲間の連帯感が強く、競争や対立よりも協力で仕事を進める。

これは、労働に希望を見いだしていた共産主義の良さの名残りだろう。
日本が近年急速に失ったものでもあるし、残念ながら、世界はあまりにも共産主義の悪口を言い過ぎたとも思う。
資本主義の効率化と競争についていけない人もいるし、そればかりが価値でもないのだ。

クリスティアンは、半グレ仲間から足を洗って真面目なスーパーマーケットの仕事に就き、同僚の年上女性マリオンに好意を寄せ、希望を見出す。
しかし、マリオンが既婚と知り、さらに彼女から冷たく当たられた日の夜は、いたたまれず半グレに逆戻り。

この不安定さがすごく人間らしいと感じた。
そして、半グレでも反社会でも、ある時小さな恋愛や人とのつながりから、まともな生活へと心を入れ替えられる可能性がある。
それが「希望の灯り」なのではないか。

最後は泣けてしまった。
派手なシーンは無いが、主演の好演をはじめ素晴らしい緊張感で撮影されている。
心が洗われる一作。

らん
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