「☆☆☆★★★ 「前を向いて行かなければ」 謎のタトゥーで無口な男の...」希望の灯り 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
☆☆☆★★★ 「前を向いて行かなければ」 謎のタトゥーで無口な男の...
☆☆☆★★★
「前を向いて行かなければ」
謎のタトゥーで無口な男のクリスティアン。
彼が見習い(おそらく)として働き始めるのは、会員型の大型業務スーパー。
※ 1 当初は毘沙門すら満足に扱え無い。そんな彼に1から手ほどきをするのが、東西統一前にこの地に在ったトラック会社を知るブルーノ。
そしてクリスティアンが密かに恋をする女性のマリオン。
映画は、1️⃣クリスティアン 2️⃣マリオン 3️⃣ブルーノの3章構造となっているが。ほとんど、働き始めるクリスティアンの目線から日常を追い掛けている…と言って良いだろうか。
この1️⃣章は、ひたすら淡々と続いて行くだけに。正直言って、少々睡魔との戦いとなり易い。
そんな最中。突如として、クリスティアンと同じタトゥーを入れた男達が登場し。途端に不穏な空気感が漂い始める。
「これはきっと何か起こる!」
どことなく暴力的な匂いが立ち込めるのだ!
そんな空気の中、2️⃣章のマリオンは。孤独なクリスティアンの心に微かな光を灯す存在となって行く。
そんな時に、ブルーノから《海》で聞かされるマリオンの事実。
クリスティアンがその時に見る、生簀の中で魚のもがき苦しむ姿。
それは、孤独に生きる自分自身の姿か?それとも助けを求める恋するマリオンの姿なのか?
そんなクリスティアンの葛藤する表情から。観客には「今度こそ暴力的な事が…」と、不安がよぎる。
だがまるで監督から「考え過ぎですよ!」と、ばかりに。諌められる様な展開へと移行するのが最後の3️⃣章。
このブルーノの章は、そんなクリスティアンとマリオンの2人を見つめて来た、ブルーノだからこそクリスティアンに語った本音が。
東西統一が生まれ。自由社会への変化に対応仕切れ無かった自分の情け無さに孤独との戦い。
だからこそ、2人はブルーノから教えて貰った。《本当の海の波の音》を聞く事が出来た。
前半は観ていてもそれほど興味も湧かず、もの凄〜く地味〜な内容でしたが。映画が進むにつれ。人間の孤独な心の奥底に寄り添い、そんな人々を慈しむ様に描いた秀作だと思いました。
2019年4月28日 Bunkamura ル・シネマ2
※ 1 以前に建築現場で働いた経験が有るのに。毘沙門の使い方が苦手…っては、ちょっと不思議ではありますが…まあ、映画全体には特に影響は無いですが(^^;;