「嘘で塗り固めたお粗末な人生」エヴァ とえさんの映画レビュー(感想・評価)
嘘で塗り固めたお粗末な人生
面白かったなぁ
一見、悪女によって人生を狂わされた男の話と思わせつつ
しかし、それは、その男が自滅しただけなのでは…と思うようになった
全く正反対の虚像と実像を持つ人がいて、その人の本質にある欲望が自らの虚像をぶち壊していったのではないかと
その化けの皮がはがれていく過程を見ていくのが、非常に面白かった
ギャスパー・ウリエル演じるベルトランは、他人の脚本を盗んで出版したところ、その舞台が大ヒットし、たちまち、次作が待ち望まれるスター脚本家となる
若くて美しい恋人もでき、まさに順風満帆の人生を送っていた
しかし、当然ながら2作目を書くことができない。
そこでベルトランは、その時出会った娼婦エヴァ(イザベル・ユペール)を題材にして脚本を書こうと思い、彼女に近づくが、次第に彼女にのめり込んでしまう…。
映画の冒頭から、何とも言えない居心地の悪さを感じていた
それは、ベルトランの嘘だらけの人生を思ったからだった
まるで玉ねぎの皮のように次から次へと嘘を積み重ね、身包み剥がしたら何もない人なのに、自分が作りあげた虚像にしがみつき、上流階級にいる人間のような顔をして生きている
そんな「いつバレるかもわからない」人生を生きるくらいなら、そんな人生はやめてしまえよ
と、ベルトランの薄っぺらい人生を思い、私はなんだか居心地が悪かったのだ
そして、そんなベルトランの目の前に現れたのが、娼婦エヴァだったのである
その時、虚像ではないベルトランの本性が、エヴァに対して「同じ匂い」を感じたのだろう。
こういうのを、同類相憐れむというのだろうか
ベルトランにとって、上流階級の賢い恋人よりも、エヴァといる方が居心地が良かったに違いない
しかし、エヴァにとってベルトランは、ただの金づるでしかないのだ
そうして、ベルトランはエヴァにのめり込むことで、自ら破滅の道を歩んでいくことになる
人にはそれぞれに合った身の丈の人生というのがあって、身の丈以上の生活をしていると、本性である欲望をむき出しにした瞬間に、虚像は崩れ落ち、あっという間に身の丈の生活に戻っていくのである
これは、まるで人間の本質を見るような作品だった