「全ては一つの細胞から始まった」アナイアレイション 全滅領域 神社エールさんの映画レビュー(感想・評価)
全ては一つの細胞から始まった
原作未読。アレックス・ガーランド監督作品は『シビル・ウォー アメリカ最後の日』のみ観賞済。
youtube shortsにてこの作品の終盤のシーンが流れてきて、そのルックに惹かれたのとまだ観てなかったことを思い出したので観賞。
観終わって思ったのが、今見ると公開当時に既に今が見えていたかのような政治的なテーマ性がありつつ、邦題のせいで勿体なくなってる作品だってことだった。
CGは必要最低限にして大衆向け路線を切ったものの、その分特殊造形物や背景美術、役者のキャスティングに資金を充てた(想像ではあるけど)ことで同年の大作映画と制作予算を張り合わない堅実で作品に対して真摯な作品なんだな印象を受けたし、ナタリー・ポートマンさんやオスカー・アイザックさんをはじめ、ジェニファー・ジェイソン・リーさんやテッサ・トンプソンさん、ベネディクト・ウォンさんなどの豪華な役者陣の演技とドラマの面白さ、まるで異世界に迷い込んだようなロケーションで説得力が増していて、CGを使わずとも大作映画にも劣らない魅力的な作品になっていたと思う。
侵略生物を、地球の誰もが罹る可能性がある敵対生物のガン細胞をモチーフにすることは(個人的には見たことがなく)新鮮味を感じたし、会話が通じる侵略生物よりも会話が通じない生存本能のみの侵略生物はより恐ろしいし、コロナ禍を経た今見ると未来を予見していた様にも感じた。
また、”別の生物に擬態する侵略生物”モチーフの映画が過去、米ソの緊張や赤狩りの時代に公開されていてそのメタファーになっていることを考えると、この作品の公開がトランプ政権の直後に公開されたのが今この現状を予測していたんじゃないかとも思える。
唯一、タイトルの『アナイアレイション -全滅領域-』が日本だとB級映画っぽいタイトルの付け方に感じられて、『エクス・マキナ』とか『シビル・ウォー アメリカ最後の日』のアレックス・ガーランド監督だと知らなかったら手に取らなかったかも知れないくらいだったので、個人的にはもうちょっと捻って欲しかったところ。