「地方出身者には覚えがあり過ぎる"あの焦燥感"を見事に表現したタイトル」ここは退屈迎えに来て robinsnestさんの映画レビュー(感想・評価)
地方出身者には覚えがあり過ぎる"あの焦燥感"を見事に表現したタイトル
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地方出身者には覚えがあり過ぎる"あの焦燥感"を見事に表現したタイトルに射抜かれた。
山内マリコの連作小説集を橋本愛、門脇麦、成田凌の共演で映画化。渡辺大知、岸井ゆきの、瀧内公美ら、近年の日本映画には欠かせない存在となった顔ぶれも嬉しい。高校時代の皆の憧れの存在・椎名を軸に、東京で10年過ごしたのち、地方に戻ってきた「私」と、元彼である「椎名」を忘れられず冴えない日々を送る「あたし」の日常が交錯する。
誰もが、ここではないどこかを求めてしまうもの。地方に残った者は東京を思い、「あたし」は失ってしまった椎名を思い……登場人物たちの諦念や思慕がヒリヒリと焦げつく。しかし、憧れを胸に旅立った東京では何も見つけられず、ノスタルジーにのせ椎名と会うも名前を忘れられていた「私」はすべてを潜り抜け、爽やかな表情を浮かべている。人間は、手の中にあるだけのカードで日々をやり過ごすしかない。何もかもが可能に思えたあの頃の記憶と、人生のほろ苦さを捨て去るのではなく、ひっそりと握りしめながら。
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