「涙がちょちょぎれた」劇場版 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか オリオンの矢 ラビットシステムさんの映画レビュー(感想・評価)
涙がちょちょぎれた
ダンまちは原作もアニメも読んでるし見てます。原作は文章が世界観と戦闘描写が卓抜しています。アニメは戦闘描写が正直並とか凡とかの評価しかできなかったので前評価は微妙でした。
まぁ、劇場版も戦闘描写は微妙だったんですけど。いいな、って思ったシーンも天から飛来するアルカナム照射くらいでした。それ以外はただカメラを回しており、凝ったカメラワークが意識されていないって感じでした。とは言っても、凝り過ぎて意味わかんなくなるくらいならそこにある情景をただ切り取るってのもいいかもしれませんけど。
んで、シナリオ評価と構成評価に行きます。
『伝説の槍を引き抜くことで、ベルはクエストに巻き込まれる』『クエストの場所は遺跡であり、そこの道中でアルテミスと親睦を深めていったり、ダンジョンでは見たことがない蠍の魔物とエンカウントしたりする』『遺跡に着くと大量発生していた蠍の苗床があったり、アルテミスがアンタレス(ボス)に囚われていることを見つける』『アンタレスに囚われたアルテミスのアルカナムを使用することで滅茶苦茶パワーアップし、オラリオは愚か世界が消滅するほどの力の引き金を引きつつある危機に陥る』『ベルは神殺しすることができる神造武器を振るい、アルテミスを殺すか苦悩し、最後にはアンタレスを槍で屠り事件は解決へ収束していく』『どこか、精神世界のような場所で、アルテミスともう一度会うような示唆を持たせ、遺跡を後にするベル一行』
こんな流れで進行していき、伏線というか布石を回収しつつ万々歳とはいきませんでしたが、ビターなエンドを迎えました。ベルくんが最後に言った『強くなりたいです』は今までの冒険の見つめなおしって感じがして、劇場版って雰囲気がありましたね。余談ですけど、ダンまち六巻の春姫の話も劇場版っぽいってあとがきに書いてありましたね。
シナリオに関しては文句は余りないんですけど、ギャグパートと日常パートが酷かった。脳内でできたギャグを無理やり映像化したって感じでぎこちなさが拭えなかったです。ヒロイン同士の言い争いを仲裁するベル、ベルへ色目を使うことを許諾できないヘスティアによるアルテミスへの頭突きだったり、文章に直してしまえばいいんですけど、どうにもぎこちないんですよ。そのぎこちなさは一概に言ってしまえば間の取り方が下手なんですよ。台本をそらんじているだけで、現実のやり取りの雰囲気がないんです。
シナリオは泣けました。ほんと泣いた。特にアンタレスに囚われアルカナムを吸い取られているので、アルテミスごと槍で貫かないと倒せないっていう救済と殺害の矛盾がいいですね。ヘスティアの涙、ベルくんの叫喚、ヴェルフの突貫、リリの魔剣射出とか……ヘルメスとリューさんとアンドロメダちゃんはまぁ……まぁです。リューさんの魔法はかっこよかった。アレは味方陣営で唯一見ごたえのある戦闘描写でした。映画館で一人グズグズ泣いてて周囲の人も引いてたかもしれないですね。
まぁ、そんで、シナリオに余り文句はないんですけど……一つ言ってしまえば、アルカナムを地上で使用するのを禁止されている神々は言ってしまえば無力な一般人なわけです。格式高い霊験あらたかなだけの。だから普通、いくら武力を持っていたって戦地に飛び込んだりしないわけです。あっても、訓練に付き合うくらい。なのに何でアルテミスは遺跡へ同行したんですかね。遺跡へ開くカードキー的な役割を持っているから? んなの神本人が出向いちゃダメやろ……。
んで、最後にBGMと挿入歌、主題歌ですね。BGMは猛々しく勇猛でありとても緊迫感があって魅了、圧倒されました。坂本真綾さんが歌っていたであろうダンスパートの挿入歌は素晴らしかった。耳が天国心地だった。井口の主題歌は……まぁいつもの井口って感じ。正直負けてた。
総括すると、序盤のギャグ、日常パートはキツかったけど、本筋に入ると没入するぜ!!って感じ。終盤はほんと泣ける。いい映画だった……二期も期待だね。