芳華 Youthのレビュー・感想・評価
全7件を表示
キャラクターの心情描写がもう少し欲しい
自由を制限され選択すらままならない激動の時代を生きた人たちの恋は、作中で披露される舞や音楽と相まって、非常に甘く、そして苦い、青春全部盛りのような魅力があり、良い映画だったと断言できる。
しかし、良い映画と面白い映画はイコールとは限らない。本作は少々退屈に感じた。
まず前半の半分くらいがベースになる文工団のシーンだが、登場人物が多く誰が誰やら把握しきれない。最後まで観れば、シャオピンとリウ・フォンとスイツ以外は覚えなくても大丈夫だとわかるが、初見では判断が難しい。
しかし、誰が誰に恋心を抱いているかは重要だと思うので、出来れば把握したいところだが…
次に、長い歳月の経過がある作品なので中盤以降は唐突な変化が多く、明らかに描写不足。途中経過のようなものがなくて結果だけが急にくる感じだろうか。
映画の尺に合わせなければならない苦労は理解できるけど、序盤の文工団のシーンに尺を使いすぎてバランスが悪かったように思う。
それと、シャオピンの恋心は、ちょっと秘めすぎじゃない?
彼女が主人公だと思うけど、気持ちが隠れすぎててどう応援していいのかわからないんだよね。せめて観ている私たちにはもっとハッキリ示して欲しかったな。
結果、気持ちが乗らないので、仮にシャオピンの想いが成就したとしてもあまり嬉しく感じないし、破れたとしても悲しく感じない。
恋、舞、音楽、映像、なんなら戦闘シーンも、美しさに変えて、苦い歴史の上に乗せた美と醜の対比、甘と苦の対比が素晴らしいけど、物語がとっ散らかって、出来の悪い「さらば我が愛 覇王別姫」のようだと思った。
青春映画としてシャオピンたちと同世代の中国人には刺さるのだろうか?
世代も国も違う私には美しさを感じ取れる以外には何も刺さらなかった。
あの日過ごした芳しい華々を私達は忘れない
今年公開のアジア圏の作品の中で特に気になってた一本。
本国中国では大ヒット、賞も受賞。話も良くて、期待通りの良作秀作。
1970年代の中国。時代背景や歴史が絡むと、幾ら隣国の少し昔の話とは言え日本人には馴染み薄いかもしれないが(中国は長らく扉を閉ざしてもいた)、これは誰の心にも染み入る青春感動作。
17歳の少女シャオピンがとある歌劇団に入団。
歌や踊りで兵士たちを慰労する軍歌劇団、文工団。
冒頭、陽光差し込む稽古場で、軽装で汗を輝かせながら稽古に励む団員たちの姿は、青春とノスタルジーを掻き立てる。
国と時代を超えて、スッと作品世界へ。
団は男子寮/女子寮の寮住まい。
女子寮は、ご想像通りの世界。先輩からのいびり、軍服事件に豊胸パッド事件…。
若い男女が一緒に過ごせば、そりゃあ色々ある。影でいちゃついたり、一人の男性を巡っての三角関係…。
シャオピンも模範生のフォンに密かな想いを。
なかなか周囲に馴染めず、のけ者笑い者のシャオピン。
辛い事もあるけれど、新しい居場所新しい仲間に囲まれ、シャワーも自由に浴びれて、思えば最も幸せな時だったかもしれない…。
古今東西、輝かしい青春は束の間。
戦争、毛沢東の死…時代が目に見えて大きく変わっていく。
若者たちもその流れに逆らえず、呑み込まれていく…。
公演は中止。
交際も風紀を乱す理由により許されない。
ある日、フォンが女子団員と揉め事を起こし、処分として戦争の最前線に送られてしまう。
シャオピンもまた野戦病院へ…。
中盤、フォンが赴いた戦地。序盤のノスタルジックな青春劇とは一転して、緊迫感溢れる戦争映画に。
敵襲。6分ワンカットの戦場シーンは圧巻の迫力で、序盤の作風とは本当に同じ映画?…と思うくらいリアルで生々しい。
シャオピンも野戦病院で負傷兵の看護に忙しい。彼女が看護する負傷兵の中に、識別も出来ないくらい全身大火傷を負った16歳の兵が。
余りにも悲惨で酷い。これが、戦争なのだ。
シャオピンにとってもフォンにとっても、文工団で過ごした日々は夢だったのか…?
やはり自分は男なので、女優さんたちばかりに目が行く。
シャオピン役のミャオ・ミャオ。おさげヘアのピュアなヒロイン像は、『初恋のきた道』のチャン・ツィイーの再来レベル! 不慣れな敬礼姿にも萌え~。
語り部のスイツにディンディン、陰湿な寮長も皆、魅力的な美人さん!
毛沢東の時代にテレサ・テンの歌、何かに明け暮れ過ごした青春の日々…監督フォン・シャオガンにとってはドストレートの時代なのだろう。
下手すりゃ個人や当時を生きた人にしか分からないが、作りや見せ方の巧さで、国も時代も違う今の我々にも充分伝わる物語になっている。
ちょいと感傷的なメロドラマ風ではあるが、それもまた良し。
監督は『唐山大地震』で史実を基にした感動作を手掛け、『戦場のレクイエム』では戦争映画も手掛け、本作はまさにキャリアベスト級、集大成と言ってもいい。
若者たちの青春群像劇スタイルだが、シャオピンとフォンの二人の愛の物語、特にシャオピン目線で見ると波乱万丈。
実は不幸な生い立ちのシャオピン。
やっと文工団で新しい生活をスタートさせたかと思いきや、戦争の渦中へ。
可憐な少女が直面した運命の数々は、残酷過ぎた。
そして彼女の心は、壊れた…。
やっと戦争が終わった。
が、シャオピンは精神を病んでしまった。
自分が文工団に居た事も覚えていない。
活動を再開した文工団。公演を披露。
シャオピンも鑑賞。すると…。
月夜の下で、舞い踊るシャオピン。記憶は忘れても、身体や心の底では忘れてはいなかったのだ。
序盤から中盤まで、文工団の歌劇は主に練習風景のみ。
が、月夜の下で舞い踊るシャオピンと文工団の公演が交錯し、このシーンの為にあったと言えよう。
そう、戦争は終わったのだ。
という事は、兵士たちを慰労する文工団の役目も終わったという事。
解散。
幸せだった事、辛かった事含め、
ここが、家だった。
皆が、家族だった。
片腕を失い帰還したフォンが閉鎖された文工団を訪れるシーンは、言葉で表せない物寂しさを滲ませる。
時が流れ…。
団員たちのその後それぞれ。作家として成功した者も居れば、満ち足りぬ生活を送る者も。
確かに世の中、平和にはなった。
が、各々、本当に幸せなのか…?
団員たちは運命で結ばれていると言えよう。再会を果たす。
シャオピンとフォンも…。
やっと結ばれた平穏な日々。
と同時に、二度と戻らないあの日々へのほろ苦さも…。
激動の時代に翻弄されながらも、大切な存在の“家族”たち、かけがえのない青春の日々…。
あの日過ごした芳しい華々を私達は忘れない。
戦争の爪痕。青春の傷痕。
とにかく良かった。本当に良い映画だった。まさしく青春。いや青春と言うよりもやはり副題に使われた"Youth"という言葉のニュアンスが近しい気がする。青春と呼ぶには複雑すぎるし切なすぎる若き時代の日々。戦争のある時代に青春時代を送った者たちの、キラキラ眩しいだけでは済まされない日常は、それでもその「若さ」が光を放ち、芳しく華やいでいる。若さゆえの痛み、若さゆえの喜び、若さゆえの失敗、若かったから出来たこと、若かったから出来なかったこと、若かったから分からなかったこと、若かったから分かったこと・・・そういうものがこの映画には全部詰め込まれているみたいに感じた。もちろん、私自身の青春がこの映画の青春と重なる部分などはごく僅かしかない。時代も違えば国も違うのだから。それなのにこの映画を見て「あぁこれは青春だ。これは若さだ」と心底思う。そして胸がぐうっと締め付けられる。青春の普遍的な部分を丁寧に掬い取った作品だったからなのではないかと思う。
なんだかまるで半年の朝ドラを一気に2時間で観たような気分だったし、それに相応するような濃厚な内容。最初は中国の名前と顔を一致させるだけで必死だったはずの登場人物に対し、物語が進むにつれそれぞれ全員に思い入れが生まれて、それぞれが抱える青春の痛みや青春の悩みがヒリヒリと沁みるように伝わってきた。それぞれが時代と戦争と社会に翻弄されながら、懸命に自分の人生を模索し、それぞれに数奇な人生を歩んでいく様子は、最後まで目が離せなかった。模範生だったはずの劉峰は、人生の舵取りをほんの僅か見誤っただけでその後の人生が大きく変動してしまうし、そしてやっぱり小萍にどうしても情が移ってしまって、心を病んでしまってから、小萍はどうしているのだろうかとずっと気が気でなかった(入り込みすぎ?)。
最後にはしっかり老けた劉峰と小萍の姿が見られて逆になんだか安心した(そうはいっても31歳だが)。そう、若さは失われるものだし、失われてこそ若さは美しいものだ。若さが失われるところまでしっかり示唆してこそ、正真正銘の青春の物語だと確信する。少し老けたふたりになぜか胸がチクリと痛む。もう若くない二人に少し切なくなる。でもその切なさが追憶の中の青春をまた輝かせる。あぁやっぱり青春時代っていうのは、一瞬の輝きであり、特別な時間なんだなと思う。
戦争描写がリアル
前情報無しのポスターだけ見て鑑賞しました。
戦争映像がリアルすぎてびっくりしました。日本だともう少しボカす表現だと思います。苦手な方は注意。
逆に言えば鮮明に描けてるんですけどね。
個人的に若者、青春賛美が過剰のような気がしました。
そういうテーマの映画を見ておいて何ですが。
若者でない私は切なくなりました。笑
1人素晴らしい人物として描かれている主人公の男性が酷い目に会うのもただただ悲しい。
歌や踊り、女優さんは美しかったです。
月明かりの下で踊る、君の美しさを忘れない。
時代背景が先ずは気になって。文革・毛沢東の死後で中越戦争前後。現代史美化に走らず、反戦に触れず。ただ、その時代に生きた若者達の物語。
本編は反則級の美女揃い。一瞬で参りました。が、生活は、めちゃくちゃヘビー。あの国には平時ってもんが無いんだ。しかも共産党による粛清の時代。一見華やかなに見える文工団も駐屯地を慰問して回る生活は軍人そのもの。
愛だの恋だのイジメだのが目まぐるしかったのに、いきなり中越戦争の最前線にワープ。これにはちょっとビックリ。
野戦病院は死を看取る場所。精神逝ってしまったシャオピンが、月明かりの元で踊る姿が切ない。自分の心を殺した少女は、踊る事を覚えていた。好きだったリウ・フォンの声には反応しなかったのに。踊ることから衣装係に逃げていたのに。痛ましい彼女の、ただ一つの、ただひと時の救いの時期が文工団だったんだ…イヤ、ここが一番切なかった。
軍中楽園ほどではないけど、結構ジワってます。好きな方です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
6/10追記
シャオピンが泣かせ役。イヤらしいくらいに泣かせに来る。もう止めろ、止めてくれって言いたくなるくらい。日本映画で描かれる戦時中の女学生そのものやんか。ん?ちょっと待て。建国以来、他国を侵略したことなど一度も無く、安寧に国を治めて国益を積み上げて来た国ってどこだっけ?なんで戦時中の日本の女学生を彷彿とさせるんや???なんて事は考えちゃダメなんだけど。
登場時の愛くるしさが苦しい。人民服の記念写真。懐中電灯を灯しながら収容所の父親にシタタメル手紙。夢中になって踊りに取り組む姿。イジメ。いじける姿。野戦病院での凄惨。助からないと判っている少年兵をかばう姿。精神を病みながら月明かりの元で踊る美しさと笑顔。10数年目の告白。
頼むから、これ以上泣かさんでくれ。ってくらいのシャオピンの人生なんだけど。冷静になって考えてみると、俺とそれほど年は変わらないのではないのか?
その事実が、何にもまして一番の衝撃だった。
住む社会がどうであれ、人はそこに幸せを見つけて生きて行ける。違う時代、違う社会から見れば、「そんな事は幸せなんかじゃないよ」って思えることであっても。なんだが。シャオピンの幸せは、あまりにもちっぽけで。。。
ただただ、染みた。
芳しき華
リウ・フォンとシャオピンが主人公だ、と冒頭で説明されるが、主人公はこの二人ではない。この二人だけではない。でもやっぱりこの二人が主人公か。
何人もの主人公の小物語を繋ぎ合わせて、楽しみ苦しみ良い事も悪い事もして生きた時代を描いた群青劇。
青っぽくて要領の良くないシャオピン。
不恰好な敬礼と屈託のない笑顔が可愛らしい。
しかしその裏にどれだけの覚悟を抱えていたのか。
17歳。入隊前のことは言葉口でしか語られないけど、相当嫌な体験をしてきたことだろうと思う。
文工団の仲間からのチクチクしたいじめの描写は、私の個人的な傷やコンプレックスを刺激してきて正直とても不快だった。
もっと生き易いやり方もあるのに、どうしてこうも上手くいかず裏目裏目に出てしまう彼女が痛々しい。
そして何の迷いもなくシャオピンを除け者にする周りの人達にイライラする。
みずみずしいタッチで、ナチュラルに嫌な出来事を掬って見せてくるギャップは、面白くもキツく感じる。
いじめをいじめとも思っていない人達それぞれにも恋心やドラマがあって、最初はそれをどう受け止めていいか分からなかった。
現実って常にそんなかんじなのかも。
話が進むに連れて、良し悪しだけでは測りきれない人間の面白さを感じ、良い方向に気持ちを向けることができた。まあ物は考えようだけど。
因果応報勧善懲悪なんてそう叶わない。
悪い言動を放っていても他に魅力があり友達で居続けたいと思う人もたしかにいる。多分。
親切だけどどっちつかずで明確に助けの手はくれなかったスイツの立場は、見ていて共感できるけどちょっとズルイかな。
それでも彼女のちょっとした行動に少し救いを感じる。
でもディンディンの色目の使い方とかシューウェンの効率の良い感じはやっぱり苦手。
世の中こういう人が成功していくんだよね。羨ましいこと。
少々良い人が過ぎるリウフォン。
徹底した善人っぷりは後に仇となるし、後に恩になる。
しかし彼に救われた人はたくさんいるんだろうな。どの場に行っても彼の背に付いて行く人が多い。
シャオピンの小さな恋心が届かないときの不憫さと言ったら。やっとの再会は精神病院だし…。
文工団の中で完結する話だと思っていたので、どんどん舞台や年代が変わることに少し驚いた。
ちょっとした隙に話がぐんと進んだり、敢えてカットして切り貼りした見せ方なので集中して観ていた。
軍服を着て銃の訓練もするとはいえ歌と踊りがメインの場から、突然のリアル戦場の描写に一気に緊張感が高まる。
文字通り白衣が血で染まる看護現場に、容赦なく命がボロボロ崩れていく奇襲。
今までの綺麗な映像とは打って変わって残酷描写も多く結構ショックだった。
全身火傷の16歳の少年に私も寄り添いたい。戦争って本当に嫌だ。嫌すぎる。やりきれない。
雪国の厳しい寒さで育った白菜は温室ですぐ腐る。
理不尽な扱いを受けても絶望的な状況下でも目の奥に芯の強さを抱いていたシャオピンの虚ろな表情が辛い。
その分、文工団の最後の演目を観て記憶や生気が蘇り一人舞うシーンがバチバチに胸打ちまくってきた。
笑って踊ってる姿が一番きれい。
大泣きしすぎてボェッボェッと声が出てしまった。周りの席に全然人がいなくて良かった。
文工団解散前の宴会もすごく好きなシーン。
今までそれが全てだったのに。無くなってしまう事実があっても実感がない。
パフォーマンスの際は表情を作って上手に美しく歌っていたのに、感情ダダ漏れのヒドい顔でヒドいクオリティの合唱をするのがもうたまらなかった。
このシーンでディンディンもシューウェンもやっぱり好きになった。
そして一気に時が経ち、30代のそれぞれの人間模様がまた面白い。
生活の格差をまじまじと感じてしまうのは辛いけど。私もこれからそんな風に思うことが増えるのかな、なんて思ったりして。友達だけは大切にしたい。
ディンディンの現在の写真にはちょっと笑ってしまった。
久しぶりにまともなツーショットを見せてくれた駅のベンチでのシャオピンとリウフォン。
過去に酷く恋い焦がれた人に対して何か諦めたような気持ちになって話してしまうの、すごく分かるな。
二人のラストカットがこの上なく美しくて安心した。
エピローグの語りにまた心震える。
次の再会と仲が進展するのに更に10年時を重ねたのか!と驚きも交えつつ。
一番幸せそうだと言われるのが二人で良かった。
この長い物語の結び方がとても良い。
枯らしたと思った涙がまた出てくる。
でも、老いた姿は見せたくないとか、若い時を一番輝いていた頃とか、その言葉が少し悲しい。
そんなこと言わないで。今が一番良いと思って生きて。昔話をずっと聞いてきたんだから未来に光を感じさせて。
なんて考えつつ、青春時代の諸々って快楽も痛みも喜びも悲しみも全部ひっくるめて良い思い出になってしまうものだなと心から思う。
私の人生も映画みたいなもの。いつか振り返ったときに今この瞬間をどう捉えるんだろう。
歳を取って死に近付くのが怖いと感じることもあるけど、色々と楽しみに生きていたいな。
良い映画だった。
リウフォンがチョコレートプラネットの長田氏に見えた。
激動の時代を生き抜いた文工団の青春
この映画は、中国雑技団の若き女性たちの日々の歌と踊りを描いた作品かなと思いっきり勘違いをしていた。激動の70年代にあった軍の文芸工作団(文工団)で生きる若き男女の実話と知った。
そのスケールの壮大さに目を奪われた。滅多ににお目に掛れない中国せいさくの作品のその凄まじい「力」の目の当たりにして、驚きの連続であった。音楽も踊渦中の人間模様も雄大であった。
この作品を「単館上映」に留めておくのは、大変勿体ない。作品は、中国の歴史「文化大革命」から「毛沢東 逝去」に至り、その後文工団は解散に至る、男女の恋愛を交えた悲しみ、その時代を生きた者たちの抗いきれない運命を強烈に私の胸に焼き付けた。「中越国境戦争」の戦争の残酷さ悲惨さの描き方は「ハクソー・リッジ」(米豪 合作 2016)に引けを取らない。
全7件を表示