劇場公開日 2019年3月29日

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「羽ばたけなかったダンボ」ダンボ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5羽ばたけなかったダンボ

2019年4月1日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

ティム・バートンは最も好きな監督の一人。
勿論、手掛けた作品もご贔屓ばかり。
でも、さすがに全部が全部ではなく、イマイチな作品も何本か。
その中の一つが、『アリス・イン・ワンダーランド』。
別にバートンとディズニーのコラボが…っていうんじゃなく(『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』や『フランケンウィニー』は好き!)、ただ自分の好きなバートン・ワールドじゃなかっただけ。
本作は、再びディズニー・アニメを実写化。
オリジナルは名作の一つだが、確かだいぶ昔に一度見たきり。
以前の実写化作がまあまあで、尚且つ今回は馴染みや愛着薄い。
ズバリ感想は、この書き出しの通りである。
と言うか、『アリス・イン・ワンダーランド』より…だったかも。

とあるサーカスで産まれた、大きな耳の子ゾウ。
その耳故、笑われ、異端や偏見の目で見られ、仲間のゾウからものけ者。
社会の輪に入れず、疎外され、孤独を抱える者への愛情たっぷりの眼差し。
確かにダンボは、ティム・バートンにぴったりだ。
でも、それは最初くらい。その後は…

笑われ者から一転、空飛ぶ子ゾウは一躍人気者に。
金儲けを企む者が現れる。
母親を亡くしたばかりの姉弟と、戦地から帰還した父の、ぎこちない関係。
それは、ダンボと引き離された母ゾウともリンク。
ちっちゃなダンボの、耳以上に大きな健気さと勇気。
それが、周囲の人々の心を動かす…。
描かれているのはどれも良質要素だが、どうも予定調和でありきたり。

実写!?…と、誰もが思ったに違いないダンボ。
何とか、ギリギリセーフの愛らしさ。
空飛ぶシーンもファンタスティックに。
ところが、これが微笑ましく楽しいのは最初だけで、慣れてしまうと、話の平凡さが本当に浮き彫りになってしまう。
終盤の見せ場も、ダンボとサーカス団員たちで母ゾウ救出くらい。
これと言って盛り上がらない。…いや、最後の方はかなり飽きてしまった。
『アリス・イン・ワンダーランド』はまだワクワクハラハラの冒険ファンタジーとしての面白味はあったのだが…。

かつてはハリウッドの問題児と言われたコリン・ファレルだが、こういうファミリー向けファンタジーにも出て、随分と落ち着いた印象になったもんだ。
マイケル・キートンとダニー・デヴィートの“バットマン&ペンギン”のバートン作品カムバックは嬉しい。
ここ最近のバートン作品のミューズであるエヴァ・グリーンはいつもながら美貌映える。
でも、キャラクターの個性も、バートン自身のイマジネーションもビジュアルも、いつもより魅力に欠ける。

心温まるファンタジーではある。
だけど、何か今一つ、ハートに響いて来ない。内容に掛けて言うなら、もっと縦横無尽に羽ばたけなかった。
作品そのものより、空飛ぶ子ゾウだけを実写化したかったような印象。
本作のダンボは単なるディズニーの金儲けだけの見世物…だったとしたら、これ以上の皮肉はない。

近大