劇場公開日 2018年5月19日

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「本作がなければ2001年宇宙の旅も違ったものになったかも知れない」イカリエ-XB1 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0本作がなければ2001年宇宙の旅も違ったものになったかも知れない

2019年1月26日
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鑑賞方法:DVD/BD

いや驚いた
このような幻のSF映画が観られるとは!
話には聞いていただけの伝説の映像を観ることができ感激した
チェコは当時は東側共産圏の国であるし、このような内容であるから日本で観ることは簡単には叶わなかったのだ

しかし米英では、チェコでの1963年公開のそれぞれ1年、2年遅れで公開されていたとのこと
そしてその影響が半端ないレベルで西側のSF映画に与えたことで有名な作品であった

果たして確かに後年の西側のSF映像作品に大きな影響を与えた作品であることが一目でわかった

特に美術は大変に優れており、その他にもモチーフが大量に引用元となっていることがわかる

例えば、2001年宇宙の旅
1968年公開、本作イギリス公開の3年後
八角形の断面をした宇宙船内の通路
メインコンピューターとの音声インタフェースの丸いライト
大きな円形の宇宙空間を望む窓
地球にいる家族とのビデオ通話
そして、別の高次の存在との接触で映画は終るところまで同じだ
そしてそれを機に人類が生まれ変わる象徴のアイコンまで同じだ
偶然の一致とは決して思えない

例えば、宇宙大作戦
1966年テレビ放映開始、本作の米国公開の2年後
円形のブリッジ、円周上に各機能の操作卓とその担当が配され前方の大型スクリーンに状況が投影される
その正面、ブリッジの中央に操舵用の操作卓がある
これはもちろんエンタープライズ号のブリッジ配置にそのまま取り入れされている
壁側の席が一段高くなっているところまで同じだ
艦内の様々な施設の美術はエンタープライズ号の転送室など様々な部分にほとんどそのまま流用されたという程のレベル
前半のエピソードはそのまま宇宙大作戦のパイロット版であった言えるおもむきだ

例えば宇宙家族ロビンソン
本作の米国公開の1年後1965年にテレビ放映された
ロボットのフライデーのつたない合成音声の話し方は本作のパトリックがご由来だったのだ
また、その銀色のボディの頭は透明な円形状のケースに金属のセンサーが納められており、一目でこれもパトリックが元ネタとわかる
目的地はアルファケンタウリで本作と同じだ
家族で行くか集団で行くかの違い

例えば、スターウォーズ
1977年公開、本作米国公開の13年後
宇宙船やデススター内部の壁面にみられる、光る縦のスリット状の幾何学パターンも本作由来だ

何故にそれほど迄の影響力があったのだろうか?
考えてみれば、ロボットの語源はチェコの作家カレル・チャペックが1920年に書いた戯曲の中の造語
つまりチェコはそれほどにレベルの高いSFの素養を持つ国であったのだ

チェコ映画については全くの無知であったが、調べてみると首都プラハにはヨーロッパ最大の撮影所があるという
1965年~1968年のアカデミー外国語映画賞では、4年連続でチェコ映画が受賞かノミネートを受けるなど、当時さまざまな国際映画祭や各国の映画賞で受賞するなど注目を浴びていたとのこと

もしかしたら本作がなければ、例に挙げたような作品は生まれなかったかもしれない
いや撮られたとしても、かなり違った物になっていたはずだ
それも悪い方向に

それほどSF映画の世界に大きな影響を与えた超重要な作品と言えるだろう
SF映画好きと自負するなら絶対に観なければならない作品だ

あき240