「視聴者を騙そうとしてやりすぎた物語」アンロック 陰謀のコード Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
視聴者を騙そうとしてやりすぎた物語
総合65点 ( ストーリー:55点|キャスト:70点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
最初はなかなか物語と演出に緊迫感もあって質感が高い作品だと思った。
だが物語は複雑でどうなっているのかわかりづらいし、そんな複雑な物語が危険な状況でなんの破綻なくトントン拍子で上手くまわっていくのには現実感がない。オーランド・ブルーム演じるジャックの偶然をよそおった主人公アリスへの接近方法はあまりにわざとらしい。
そしていくつも出てくる物語の裏切り場面は、視聴者を騙したいのだろうなという意図はわかる。だけど黒幕の目的がアメリカの危機管理体制を厳しくすることだということなのだが、そのためにアメリカ本土を危機的状況にするためのウイルスをばら撒くなんていうのがあまりに馬鹿げている。こんな理由で納得して国家を裏切り家族と友人が死ぬかもしれない計画のために黒幕に協力するCIA職員がいったいどれくらいいるだろうか。大きな目標をもってアリスに対して色々と小細工を練っている割に、悪役としては力不足だった。
活劇部分も良く出来ているようで急に質が下がる場面がある。ジャックに体が触れるくらいの近距離でアリスが銃を突きつけて身体を拘束するなんて、反撃がいくらでもされてしまうだろうにと思いながら観ていた。
脇役にオーランド・ブルーム、ジョン・マルコヴィッチ、マイケル・ダグラスと有名どころが並んでいてすぐに顔を認識できる。
これらのうちの誰かが黒幕なんだろうが、オーランド・ブルームはあまりにわざとらしい登場ですぐに怪しいと思った。でも彼を送り込んだ黒幕の上司はマルコヴィッチかと思っていた。マイケル・ダグラスは彼の行動の背景に色々言い訳をつけているが、彼は狂信的な鷹派アメリカ主義者というよりも、アメリカ内部にいる他国と繋がっているテロリストなのではないかと考えたほうが辻褄が合う。
ロッテントマトでの評価は4.2とかなり低い。興行収入はわずか4.7百万ドルでかなりの大赤字ではないか。
自分はそれなりの緊迫感もありそこまで悪いとは思わなかったが、物語の整合性と演出の質感が足りないとは思った。ただしテレビ放送を観たので10分ほど短縮されているみたいで、その分物語への理解が追い付かなかったというのはあるだろう。