「アナーキー」パンク侍、斬られて候 CBさんの映画レビュー(感想・評価)
アナーキー
アナーキーってこういうことなのかなあ、って考えさせる映画だとしたら、俺はそう考えてるから成功してる。
浅野忠信、永瀬正敏、豊川悦治、綾野剛、北川景子、東出昌大、染谷将太といった錚々たる俳優陣が、揃いも揃ってなんてわけのわからない映画撮ったんだろう。
眠らずに最後まで観られたってことは、きっとそれなりにうまく作ってあるんだと思う。
それでも感想は「わけわからんなあ」のみだ。
東宝が、万人受けしそうなオーソドックスな話を撮ってくるのに対し、東映は、個性的な映画を撮ってきてるんだってことはわかった。
音楽いや映像ノリはイケてるのかもしれないが、残念ながら俺がパンクにはまってないのだろう。どうにもわからなかったなあ、原作読んでみようかな。
地位争いの空しさや、行列があれば並び、その時の話題に流されやすい日本人の主体のなさ、そういったものを、時代劇の中に埋め込んで観客に届けてくれていることはわかった。そして、その根底には刹那的なアナーキズムが流れているように思う。
それだからこそ、無難大好きで大勢順応を愛する自分は、この映画から批評され冷たく突き放されているように潜在意識で感じているのかもしれない。それをごまかすために「わけわからんかったなあ」という反応となているのだろうか。
ちなみに中途半端に夕方の時間だったためか、生まれて初めて「最初から最後まで劇場を独り占め」という状態で観ました。
映画.COMの紹介文にありましたが、この映画が商業映画として作られていることが奇跡なのかもしれない。
あまりにわからなかったので、以下キネマ旬報からの受け売りがほとんどですが追記します。
石井監督(旧名・聰亙、現名・岳龍)って人は、その場のエネルギーをそのまま絵にすることを大切にする監督とのこと。
なるほどって思う。それは本当に出来てたから。エネルギッシュだったか?と聞かれたら、観た全員がイエスと答えるだろう。
さらに、監督に一貫しているのは、現状破壊への衝動だとのこと。これもまた、イエスだ。
過去作、たとえば「爆裂都市」を見てみなきゃいけないんだろう。
パンク=傾奇者(かぶきもの)か、なるほど。
浅野忠信は真にやばい人間に見えるし、永瀬正敏は猿の役で大して動かないしフルメイクだし声は別録だし、永瀬正敏がやる意味があるのかどうかわからないのだが、こうしたこと自体がパンクなのだろう。(東出昌大は「けだし、正論」という台詞がめちゃくちゃあっている、という評にこの上なく同感)
演じている方、撮っている方は熱く熱く、限りない熱気をこの映画の中に押し込めて、その熱気を感じ取れる人には極上の映画なのだろう。
考えるのではなく、感じることが大切な映画なのだろう。映画を観るという感覚よりも、ライブを見に行く感覚で行くべきだったと、今は思う。
自分はまだパンクではなかったようだ。