劇場公開日 2018年9月14日

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「最後いらない」愛しのアイリーン ニックルさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0最後いらない

2020年3月15日
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最後がなければ突っ込みどころは色々ありながらも、セックスとか性の虚しさを描き切った良作だったと思う。
そもそもなぜアイリーンが瀕死の義母を雪の中おぶって外に連れ出すのかが分からない。結局死ぬわけで、立派な過失致死やんと。
人を殺したとは言え散々好き勝手してきた岩男にまだ気持ちはあるという感じも、分かるようで分からない。
分からないついでに、伊勢谷友介が演じたヤクザも...母親を捨てた日本人に恨みがあるからフィリピン人の斡旋の仕事をしてるっていうのもね。フィリピン人女性に日本人から金を奪わせる事が復讐っていう強迫観念が、どうも遠からず外れという訳ではないのだろうけど整理不足な感じがする。このキャラがアイリーンのためにここまでしようとする理由が分からないし弱い。

でも面白いと思わせる所は多々あって、岩男とその母親の現実にありえないとまでは言わないけども古くさい感じ。古いというのは時として悪ではなくて、古さが人によっては現実のライン超えた所で、新しさやテーマに寄与する事があると思う。
人を殺しちゃった所で初めてアイリーンと関係を持つ。そこから他の女ともヤリまくる岩男。この流れが唐突な所が面白い。人を殺すという事がちゃんと表現されているし、人間として完全に壊れてしまっただろう岩男が繰り返すかつては憧れ続けたであろうセックスの虚しさ。個人的には男にとってのセックスってただ繰り返されるだけのものだと思っていて、その感じが痛々しい。愛なんかより虚しいセックス。男ってほんと虚しいわと。この監督の資質はこういうところにあると思う。

岩男って名前もそうだけど、これ今村昌平の『復讐するは我にあり』のオマージュだろうし、同じような面白さを感じた。
『岬の兄妹』もそうだったけど、今村昌平っぽさが今新しいのだと思う。共感ではなく刮目させる事で物語を引っ張る映画。『岬〜』は『赤い殺意』でこっちは『復讐〜』かと。
だからこそ、なぜ岩男が「アイリーン」と木に彫り続けてたのかが謎。この辺が原作を映画にする限界だと思う。

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