劇場公開日 2018年9月14日

  • 予告編を見る

「ビジュアルでなく演技で役の魂を呼び寄せる」愛しのアイリーン バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ビジュアルでなく演技で役の魂を呼び寄せる

2018年9月29日
PCから投稿

𠮷田恵輔作品で役者が良くないなんてことはほとんどあり得ないが、本作の役者陣のみごとさも想像を超えてきた。

アイリーン役のナッツ・シトイの好演は、ビジュアルがピッタリなこともあって「原作から飛び出してきたような」と表現しやすい。しかし安田顕と木野花の「原作から飛び出してきたような」は種類が違う。二人ともビジュアルは原作とまったく似ていないのに、キャラの魂が取り憑いたかのようにごつごつと荒々しく画面の中に息づいている。演技であることは承知しているのに、その生々しさに圧倒される。木野花なんてドラマ「この世界の片隅に」で似た風体で出ているせいで、こっちでもいつ暴れ出すかと無駄にハラハラしてしまった。

𠮷田監督はこの原作に惚れ込んで、長年映画化を待ち望んでいたというが、原作がこの監督を得たことも幸せだっただろうと思う。その分、𠮷田監督らしさより原作の映像化を優先したようにも感じたが、高校時代は学年一の美少女だったろうと思わせるくたびれた中年女性役に河井青葉をキャスティングする的確な意地悪さには、さすが𠮷田監督とうならされた。

村山章