「周防監督、あふれんばかりの映画愛」カツベン! AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
周防監督、あふれんばかりの映画愛
無声映画に活動弁士が語りを入れるというスタイルが、日本独自の文化だというのは、恥ずかしながら初めて知った。単にストーリーを説明するだけでなく、作品を一層面白くしたり、場合によっては映像をまるで違う文脈に変えてしまったりと、活動弁士の魅力と創造的な要素が作中でもしっかり描かれる。
成田凌をはじめ、永瀬正敏、高良健吾ら弁士役のキャストは、相当な期間を発声や独特の話し方の訓練にあてて準備したという。おかげで、彼らの演技はもちろん、「声」そのものの響きや調子も耳で楽しめる作品になった。
周防正行監督が本作に注いだ情熱、映画愛も尋常でない。劇中に白黒映画が10本ほど登場するが、すべて今作のためにシーンを撮影。そこに出演するのも過去の周防作品で主演した草刈民代や上白石萌音というぜいたくぶり。こだわりぬいた映像に、表現力豊かな俳優の声もあわせ、ぜひ環境の整った映画館で鑑賞してほしい娯楽大作だ。
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