「ヒグマ、ヘビ女、クモ嫌い女」カツベン! kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ヒグマ、ヘビ女、クモ嫌い女
日本には弁士がいたため、正確にはサイレント映画ではない!という最後のテロップにより、あらためて納得。最近では山崎バニラさんをTVで見かける程度で、当時の活動弁士の活躍を見たくなります。弁士が変わればストーリーだって変わるといったシーンが絶妙で、個性がその人気をも左右していたとわかります。
序盤における子供時代の俊太郎と梅子のエピソードがとても良かった。トイレと蜘蛛。キャラメルと草履。貧しいながらも田舎の芝居小屋での活動写真に憧れる様子がたっぷりで、悪ガキたちが撮影の邪魔をするも、それが本編でも使われていたところも微笑ましい。粋なねえちゃん立小便もワンカットでありながら印象に残るし、寅さんの口上まで思い出してしまいました。
ライバルでヤクザな橘の映画館。汚い引き抜きもあったり、かつて俊太郎とともに泥棒家業の仲間だった男が邪魔をする。挙句の果ては、俊太郎が持ち帰った金を探すためにフィルムをずたずたに切ってしまうという荒業。ここまでくれば『ニューシネマ・パラダイス』だろう・・・とも感じるのですが、これがツギハギだらけの映画で弁士の腕を試されることになるのだ。
中盤までは予想していたより笑えない。しかし、その終盤からが色んな想いが集約し、映画愛を感じさせる展開になりました。ちなみに山本耕史演ずる牧野省三と池松壮亮演ずる二川文太郎は映画界を支えた実在の人物。やっぱり美味しいところを持っていくなぁ、池松壮亮。
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