「原題タイトル、Hostilesに込められた意味」荒野の誓い ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
原題タイトル、Hostilesに込められた意味
重厚感のある物語だ。
おそらく今観るべきと言って良いかもしれない。
ストーリーの背景は、よく知られたアメリカの歴史、つまり、アメリカ原住民との争いだ。
そして、そのなかで、ひとりひとりの生死や物語が描かれる。
殺し合いの果てに、トラウマを抱え精神を病むもの、殺戮が当たり前のようになるものがいる。
家族を殺されたロザリーは、なぜ復讐心をしまうことができたのか、そんな心の変化も是非感じて欲しい。
「神の試練に耐えられなくなることがある。」
いや、違う。試練は人間自身が自らもたらしたものではないか。
「親切をありがとう。あなたの心は私の中で生き続けます。」
そう。世界中に多くの神はいるが、実は神は一人で、私達ひとりひとりのなかにいるのではないか。それは、優しさだったり、道徳心だったり、正義とか公平とか、共生する気持ちだったり、そんなもののひと塊りのようなものではないのか。
「過去に囚われるのはやめよう。私の一部はあなたとともに死んでいく。」
そう、それは、全て忘れ去ることではなく、憎しみや復讐心を捨て去ることだ。
「どんな未来であれ、あなたの幸福を祈ります。」
ジョーは、熊(ベア)の名前を持つ少女にジュリアス・シーザーの本を渡す。神の物語や聖書などではなく、ひとりの人間の物語を。
ロザリーに別れを告げ、立ち去ろうとしたジョーは、思い直して、動き出した列車にそっと乗り込む。
未来は、幸福な未来は、すぐそこにあったのだ。
Hostiles(敵)とは、何だろうか。
肌の色や、民族の違う相手のことだろうか。
自分達と異なる神を奉じるものだろうか。
いや、同じカテゴリーのなかにあっても、自らの利益のために、ルールなど関係なく、他の全てを敵とするものもいる。
敵、それは試練と同じで、人間が自分で作り出したものだ。
困難な時代だ。
だが、振り子は必ず反対に振れると信じている。