「儚く美しい女たち」軍中楽園 バラージさんの映画レビュー(感想・評価)
儚く美しい女たち
1969年、いまだ緊張関係にあった中国と台湾。その国境最前線にある台湾の金門島にあった、軍が管理する娼館「特約茶室」(コードネーム「831」、通称「軍中楽園」)に集まった人々の群像を、それを管理する部署に配属された新兵の青年を主人公に描いたドラマ映画である。ニウ・チェンザー監督作だが、ホウ・シャオシェンが編集に協力している。
「軍中楽園」は国共内戦に敗れて台湾に逃亡してきた国民党が1951年に金門島に設置したという。軍人は結婚が禁止されたためもあって、島民女性への暴行が多発したことが理由とのことで、やがて台湾全土に広げられた。軍が民間に委託した形を取ったことや全体的なシステムなど、日本軍の慰安婦によく似ている。1992年に廃止されるまで台湾では公然の秘密だったらしい。
映画ではそのような背景の説明は最小限にとどめ、架空の登場人物たちの架空の物語を描いている。主人公の青年が経験するほろ苦い青春や、小悪魔のような若い娼婦に入れあげる大陸に戻れなくなった古参兵の悲劇、軍や娼館の非人間性に耐えきれず泳いで大陸に渡ろうとする主人公の親友と若い娼婦の恋などが描かれていく。ちょっと美しくノスタルジックにまとめられ過ぎてるような気がするが、映画としてはなかなか面白かった。特に主人公と友情のような仄かな恋のような関係で結ばれる影のある娼婦を演じたレジーナ・ワンが素晴らしく魅力的で美しい。これでファンになりました。イーサン・ルアン、チェン・ジェンビン、アイビー・チェンらも好演。
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