劇場公開日 2018年12月1日

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「「無線の先からハッピー!」」セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー! つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「無線の先からハッピー!」

2024年1月20日
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鑑賞方法:DVD/BD

ある日、自分の国が無くなる。そんな事、誰が考えるだろう。
少なくとも、大多数の日本人が、日本は明日も明後日も、もっと何年も先も、日本として存在することを疑っていないように思う。
「セルジオ&セルゲイ」の一方の主人公、セルゲイだって、多分同じだ。
人間を宇宙に送り込む、そんな最先端の科学力を有する自分の国が、崩壊するなんて考えたことがあるだろうか?

ソビエト連邦の崩壊は、世界地図を大きく塗り替える大事件だった。当事者であるロシアや、近隣である東欧の混乱と変化は何度も目にしたし、想像も出来たが、キューバに与えた影響までは考えたことがなかった。
そんな混乱期のキューバに暮らす「旧価値観のエリート」セルジオがこの作品のもう一方の主人公である。

国家の崩壊、という思いがけない出来事が、セルゲイとセルジオの人生に大きな混乱をもたらしていることは明白で、「こんなこと、度々あるとは思えない」という思いと、「アメリカが急速に力を失えば、日本だって同じことが起こるかもしれない」という思いが交錯する。

激動の波に晒されるとき、それでも個人と個人の繋がりは自由だ。アマチュア無線を通して繋がっているセルジオ・セルゲイ・そしてアメリカのピーターは、立場や過去は重ならなくても、「無線」という趣味を通して「我々は仲間だ」という同一視の視点を持っている。
いろんな事が違うけど、オレたち好きなことは一緒だよね、という連帯感は私たちが思っているより重要だ。

ソ連崩壊の過程、キューバ独立の歴史、アメリカへの移民という過去は、彼らの存在を構築する大事な要素だ。人は過去によって創られる。
しかし、未来は自分の意志によって創られていく。自分を創ってきたもの、その祝福と呪いをどう選択するかは、すべて自分次第だ。
その時自分を導くものが、「好きなこと」であるというのがこの映画が最高にハッピーな理由。

「宇宙からハロー!」、なんていうのんきな副題がつけられているが、そんな副題をつけたくなるほどこの映画はハッピーに見える。
先も見えない毎日で、苦しいことも多いけど、でも「好きなこと」が人と人とを繋げて、励まし合い、歩み寄り、誰かが誰かの助けになる。
ポジティブな未来を創ろう、という意志がポジティブな未来へと繋がっていくハッピーな映画に、ハッピーな気持ちを貰える素敵な映画。

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つとみ