「タブーをおかす」彼が愛したケーキ職人 ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
タブーをおかす
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私自身信仰を持っていないので、信仰について100%理解ができないことを前提で鑑賞しました。ユダヤ教の戒律が厳しいことは何となくは知っていましたが、改めてユダヤ教についてググってみると、沢山の規定や規律があって、オーレンは同性愛や不倫などのタブーをおかしながらもトーマスを愛していたことが分かりました。また、トーマス自身もドイツ人がイスラエルで良くない扱いを受けることを承知の上で、住むことを決めています。
オーレンもトーマスも互いが対立し合う立場であるにもかかわらず、愛しあっていました。そんなふたりを観ていたら、ナチスの優勢思想やユダヤ教の選民思想、つまり排他的差別的な思想は、権力者が国民を上手く操る為のもので、監督がこの思想をふたりを通して否定的に描いていると感じました。
今作の監督が敬虔なユダヤ人かどうかは分かりませんが、作品から信仰に対するある種の息苦しさの様なものを感じました。それは、オーレンの妻であるアルトがトーマスを訪ねたラストシーンからも伝わります。信仰が生活を守ってきたと言われればそうかと思いますが、逆に信仰が人権をおかしていないと言えば嘘になるのではないでしょうか。イスラエルでも、信仰よりもパーソナルな権利が主流になりつつある過渡期を迎えている気がしました。
思いがけない名作でした。
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