ラッカは静かに虐殺されているのレビュー・感想・評価
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世界平和のためにできることは
今年の頭に何本かの難民映画を観ており、その影響からか本作も観ないとなぁ、とは思っていました。そして鑑賞。90分間固唾を飲んで凝視しておりました。
市民の虐殺が行われるラッカの惨状や、そんなラッカから情報を発信するRBSSの居残りメンバーのすごすぎる勇敢さに激しく感銘を受けます。そして、ISがやってる子ども洗脳のクソさには本当に憤怒の感情が湧き上がる。幼児がぬいぐるみの首をかっ切る映像は最悪でした。RBSSメンバーの「ISは思想だ。空爆では解解決しない」との言葉は重いです。今年の流行語「怒りは怒りを来す」が頭をよぎります。
個人的にもっとも印象に残ったのは、ドイツの移民排斥デモです。なんだか情けなくなります。未知の存在への恐れなのか、日々のフラストレーションなのか、強いものに同一化することで己の弱さから目をそらしているだけなのか。RBSSの凄まじい闘いを目の当たりにした後にヤツらを見ると、その矮小さにため息が出ますね。
はっきり言って、世界平和が訪れればいいな、と思います。世界平和の実現は100万年後かもしれないですが、そこに至るに必要なことは、人類が少しずつ現実を知って考えることなんじゃないかと思いました。
正直、シリア問題に対して何か大きなアクションはできないかもしれないし、それをしちゃうと目の前の生活が成り立たないかもしれない。でも、勇敢な人たちが発信した情報をキャッチして、考えることはできます。それから、できることを行動してもいいし、その時が来るのを待つのもいい。シリアを切り取った問題ですが、テーマはもっと普遍的だから、感じたことを日常生活に落とし込んでもいい。政治を意識するとか、苦しくなったときに排外主義に走りそうになっている自分に気づくとか。
本当に観てよかった、いや、個人的に観る必要があったドキュメンタリーでした。
死と破壊
シリアのラッカでのISの酷業をジャーナリストとなった市民が危険と隣り合わせでありながらもSNSを駆使し世界へ地獄の惨状を報道する姿を追うドキュメンタリーである。ドキュメンタリー映画としては大変エモーショナルに演出されており、BGM、編集、カメラワーク、マットな画質等、イギリスのBBCのドキュメンタリーを観ているようなハイセンスな出来映えである。身の危険を感じた創立メンバー達が国外へ脱出し、国内に残る仲間達と連携を取りながら報道ソースを世界に発信するのだが、勿論ISもその状況を許す筈もなく、仲間や肉親の処刑、又逃亡先の国のISシンパに対する暗殺命令など、あらゆる仕打ちを彼らに仕掛ける、それに輪を掛け逃亡先の右派に拠る外国人排斥運動も立ち上がってくるのだが、それでも自由の為に報道で闘う姿をドキュメンタリーぎりぎりのドラマティックな編集が施されている作品である。
彼らの言う『ISは思想』という言葉に、このいつまで続くか分からない非道の虚無感に否が応にも苛まれてしまう。人類有史から続く戦争の虚しさをいつになったら人間は気付くのか、はたまたこれは人間の本質なのか、本当に心が折れてしまう。映像では、比較的耐えられる処刑シーンが差し込まれているので、鑑賞するにはそれなりの覚悟が必要と思う。彼らのような高等教育を受けた人だからなのか、キチンと今の世界情勢を鑑みながらの分析力の深さにも敬服する内容にもなっている。尚、現在はISが弱体した後、クルド人、又は欧米の空爆、そしてアサド政権との戦いというもっと深い混沌がラッカを支配し、益々状況は悪化の一途なのとのこと。この町の希望は果たして訪れるのだろうか、本当に心から深い悲しみに途方に暮れる。タバコを吸うシーンが多く撮られているのは、イスラム教に於いて酒が飲めない戒律上、唯一の精神安定剤なのだということが切実に表現されていてかなり痛々しい。
ラッカは静かに毒されている
このシーンが嫌!
ISの3才位の子供が熊のぬいぐるみの首を切って叫んでいるシーン
このシーンが好き!
夢は結婚すること と照れくさそうに言うシーン
生まれたばかりを優しく見る親
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