「心の資産はいつまでも」ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow げどたんさんの映画レビュー(感想・評価)
心の資産はいつまでも
「ラブライブサンシャイン」は無印(μ's)とは、そもそもの構成が異なる。
無印はどこまでも「9人の物語」であった。その証拠に、μ'sは劇場版でも最後スクールアイドル皆を参加させた「サニソン」を行いながらも、「あくまで最高の曲は9人だけの僕たちはひとつの光」であった。
一方、サンシャインは最初からライバルチームにも重きをおいており、また最初の体育館から「街の人の温情」が随所に表現されていることから、「主人公チーム9人に限らない、スクールアイドル文化全体に焦点を当てた作品」といえる。
また、この作品は状況に応じていくつか焦点があたるキャラが変わるが、共通したテーマは「次に進むためには心残り(心の負債)を解消する必要がある」「心残りを解消すれば、思い出(心の資産)はいつまでも残る」ということかと。
さて、その観点で当作品(劇場版)を見ていきましょう。
●鞠莉ママの行動と、渡辺月の存在
この二人は、「スクールアイドル文化を応援するもの」の象徴と考えられる。
鞠莉ママの行動の真の目的は、「娘の後輩を成長させること」「それを通じて、鞠莉の心残りを解消すること」だったと考えると、全て辻褄があう。
鞠莉が2期で、「新しい学校の理事を打診されている」という話がありましたが、小原家は浦の星廃校にあたり、新しい学校に寄付先を切り替えたものと思われる。
そして、「生徒会長」である「渡辺月」と面識をもった。
渡辺月から、部活説明会でAqoursが失敗した旨を聞いた鞠莉ママは、Aqoursに鞠莉達を追わせ、合流させた上で、全員の前で「くだらない」といってAqoursの闘争心を点火させた。
・鞠莉ママがヘリで来た時に、浜辺に渡辺月までいたのは事前相談があったから
・ホテルオハラの豪華さに戸惑うsaintsnowに対して、余裕の渡辺月
・聖良の「行った方がいいと思います」というセリフの時の、渡辺月の拍子抜けしたような表情は、鞠莉ママとの打ち合わせで、Aqoursが即決しなかった場合の後押しは自分がやる予定だったから
と、想定できる。
鞠莉ママは、優勝までの過程において、既にAqours、スクールアイドル活動を認めていたのだと思う。
ただ、「親子揃って頑固者」なので、娘にそれを口にすることはなかった。
スペイン広場での心変わりがアッサリしすぎに見えたのは、あくまで「Aqoursの調子が戻ったか」だけを確認したかったからであり、それが確認できたから、あのライブ中に「気づいたような表情ではあるが、決して驚いてはいない表情」をした。
あのスペイン広場ライブで初めてスクールアイドルの素晴らしさに気づいて考え方を変えたのであれば、もっとあからさまに驚いたり感動した表情をするはず。
「後輩の成長を見届けないと、心残りで次に集中出来ない」っていうのは、部活なり仕事なりで、卒業や異動で離れる経験をした人は感じたことはあるでしょう。
●saintsnowについて
裏主人公ポジションになっている。
ここでも、「心残りの解消」が次に進むための鍵。
理亞は、前に進む意識はあるのに、心残りのせいで行動が極端になっており、逆にうまくいっていなかったので、それを解消する必要があった。
「転校」のくだりは聖良が本気でそれがベストだと思ったというよりは、今の理亞の状況をみて、何かしら早急に打開策を立てる必要がある中で思いついた一案に過ぎないと推測。
心残りを断ち切ることの重要性に一番最初に気づいたのがルビィなのは、姉への心残りがあって部活説明会で失敗した経験と、イタリアで姉に会って、今度こそそれを断ち切れた(髪を拭いてもらうのを拒否した場面で示されている)という経験があったから。
●最後に浦の星を訪れた意味
これもAqours全員が心残りを解消するためですね。閉めたはずの門が少し開いてたのは、取り壊しの工事関係者が出入りしたからで、千歌はそれに気づいたから、「全部ここ(心)に残ってる」という話をした。
●ライブの衣装、ダンス
「BrightestMelody」で一、ニ年生だけ服が変わったのは、一、ニ年生はこの時点で心残りを断ち切れており、「一皮剥け」て成長したからで、3年生はまだこの時点では「一、二年生だけのライブを見てない」ので、心残りがあるので服が変わらない。
最後の「NextSPARKLING!!」で、6人のライブを見届けたことで、心残りがなくなり、「飛び立つ」3年生(の心)には、飛び立てるよう「両翼」が生えた。
そして、心の資産としていつまでも残るのは、劇中のキャラだけでなく、キャスト、スタッフ、沼津の方々、我々ファン皆同じ。
詰め込まれてるようで、一貫したメッセージが伝わってきた最高の映画でした。