「缶」運命は踊る ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
缶
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あの缶が、あのたったひとつの缶が人間の生死を決めてしまった。殺された人間も殺した人間も、彼らの運命には0.5秒の価値しかなかったのだろうか。悪夢であって欲しい。そう、ここの全てが悪夢であって欲しい。
ミハエルは地雷を踏まなかった。地雷は他の人間が踏んだ。地雷を踏まずに生き残ったミハエルの子供を偶然身ごもったダフナ。ミハエルが地雷を踏んでいたら、生まれてこなかったヨナタン。ヨナタンが生まれてこなかったら、あの時若者達は、車の中で死なずに済んだのだろうか。もしかすると、他人の運命と自分の運命はずっとずっと繋がっているのかもしれない。そう思うと、簡単に人の運命に立ち入るべきではないだろう。
簡単に人の運命に立ち入る事は、紛争が絶えない中東では日常だ。簡単に人が死に、簡単に人が殺される。作品中「アウシュビッツにいた曾祖父が」というセリフが出てきたが、過去のユダヤ人に起こった悲劇が、今のユダヤ人の運命に大きく関係していると言いたいのだろうか。収容所にいた民族が、収容所の様な国で暮らしていることを。
この作品から醸し出される重苦しい空気。そして運命の描写は、戦争の様な酷い過去を繋ぎ続けている人類の愚かさを示唆している様に感じた。
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