「我は汝、汝は我…。ヤングアダルトが好きそうな要素は満載だが、流石に設定に無理がないか?」あした世界が終わるとしても たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
我は汝、汝は我…。ヤングアダルトが好きそうな要素は満載だが、流石に設定に無理がないか?
パラレルワールドによる侵攻を防ごうと、高校生・狭間真と彼の仲間たちが戦いを繰り広げるSFアクションアニメ。
主人公、狭間真を演じるのは『進撃の巨人』シリーズや『僕のヒーローアカデミア』シリーズの梶裕貴。
全編3DCGで描かれるアニメーションだが、開始5秒でそのクオリティの低さにズッコケてしまった。
2019年の作品でありながら、まるでPS3のムービーのような生気のなさ。日常描写に全く生活感が無く、お人形が動いているみたい。コレで90分はキッツいぞ…💦
とはいえ、アクションシーンは中々迫力があり、物語が進むにつれCGクオリティの違和感は無くなっていった。
本作の監督、櫻木優平さん。
どっかで見たことある顔だと思っていたら、あの「極めてなにか生命に対する侮辱を感じます」事件の時に、宮崎駿の向かい側でコーヒー飲んでた人だ!
『毛虫のボロ』にスタッフとして参加していた人なんですね〜、なるほど。
あの状況でコーヒーを飲めるとは中々の胆力っ!と思っていたが、やはりアニメ監督ともなるとあのくらいの大胆さは必要なんだろうねー。
『エヴァンゲリオン』+『ターミネーター』+『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』+『ペルソナ』+『鋼の錬金術師』。
コレを6で割ると本作の出来上がり。
ネタ元が非常によくわかる作品だが、どの要素を取ってみてもオリジナル作品の方がよく出来ている。
主題歌にあいみょん、梶裕貴や内田真礼といった人気声優を起用、高校生のラヴ・ストーリー、美少女ロボット・バトル、現代の東京が異世界に侵蝕されるという『ペルソナ』感、etc…。
なるほど、如何にもマーケターが考えたような「若者にウケる映画」要素が詰まっている。
でも、こういう見え透いた商売気は作品のクオリティ向上になんの意味も持たない。
本作の長所は迫力のあるバトル描写。
コレは確かに優れていると思う。
CGのクオリティは、例えば同年公開の『トイ・ストーリー4』なんかとは比べ物にはならない。
しかし、日本アニメっぽさを絶妙に残しながらも、CG特有の立体感を全面に押し出した、スピーディーなバトル・シーンは中々の見所。
しかし、予算の問題なのか人員の問題なのか、バトル描写が少ない。
最大の長所を殺してまで描かれるのは、クソほどどうでも良い恋愛描写や退屈な世界観の説明。
主人公とヒロインのキャラデザインと性格があまりにもテンプレ的で全く好感が持てない。
しかも、なんか暗くてジメジメしている。せめてカラッと明るく楽しいアニメを見せてくれ。
止め絵で描かれるデート描写は、ボラギノールのcmみたいだった。
あまりにも飲み込みづらい設定もうーん…。
パラレルワールドとは命がリンクしているらしい。
裏の世界で死ぬと表の世界でも死ぬらしい。
…いや、それ流石に設定に無理があるだろう💦
表と裏が繋がっているということは、どちらの世界も同じ人と結婚して、しかも全く同じタイミングで子供が産まれるってことでしょう?
そっくりな世界というならともかく、全く違う歴史を歩んでいる世界でそんなことある?いやまあこの映画内でそうだといっているんだからそうなんだろうけどさ。なんかモヤモヤするわ。
パラレルワールドの本格的な侵攻が始まり、真とジンがそれに対抗する。
それ自体は王道なストーリーで良いんだが、問題はミッションクリアの条件がよくわからない、ということ。
何をすればパラレルワールドの侵攻を阻止できるのかよくわからないまま、なんかチマチマしたバトルを繰り返し、何をするのかよくわからないままパラレルワールドに突入する。
表と裏が繋がっている以上、黒幕である公卿たちを殺すわけにもいかないし、だからといって〇〇をすれば両方の世界のリンクが消滅する、という具体的な目的は描かれない。
なんとなくラスボスと戦って、そのままなんとなく世界は丸く収まってしまう。
大体敵の力を無力化する抗体を実は作ってました、とか都合が良すぎるんだよ。シナリオに必然性とかそういうものがまるで感じられん。
こういったシナリオや世界設定は、ゲームとかなら違和感なく受け入れられるかもしれない。しかし、ストーリーの重要性がゲームよりも高い映画という媒体では、ちょっと受け入れがたい。
バトル描写はすごいので、CGアニメに興味がある人には一見の価値があるかもしれないが、ライトなアニメファンや普通の映画ファンならスルーして良い作品だと思う。
…未だに女子高生のお風呂イベントとか、セクハラっぽいやり取りがアニメとかゲームには蔓延しているけど、いい加減そこから卒業しないか?時代は変わっているんだよ。