「何か大きなもの創る人間は、誰かとの出会いを通じて初めてそれを産み出すものなのか」マルクス・エンゲルス Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
何か大きなもの創る人間は、誰かとの出会いを通じて初めてそれを産み出すものなのか
ラウル・ペック監督による2017年製作のフランス・ドイツ・ベルギー合作映画。
原題:Le jeune Karl Marx、配給:ハーク。
変革者には憧れるが共産党は嫌いということで、マルクス及びエンゲルスの人物像は殆んど何も知らなかった。ということもあってか、明治維新の大凡20年前、1840年代欧州を舞台にした若き知識人マルクス・エンゲルスの葛藤・運動・友情を丁寧に描いていて、とても興味深かった。
マルクスがドイツのユダヤ改宗家庭の息子で、一方エンゲルスはドイツのブルジョワ経営者の息子であることも初めて知った。対照的な二人が意気投合して、パリ、ブリュッセル、ロンドンで、二人で構築した理論に則ったかたちで、協力しながら理論運動を進めていく姿はかなり新鮮。ビートルズのジョンとポールの共作、或いはワトソンとクリックの共同研究の様に、何かを創る人間はヒトとの出会いを通じて新しいものを産み出すことを、再確認した様な気がした。
ただ、発言は無しとのことで労働者運動指導者の集まりに参加した2人が、クーデター的に方針を変えさせて共産党と名乗るのには、事実だろうが、将来の組織の性格を予兆している様でもあり恐怖感を覚えた。また、マルクスがロシアからの参加者を田舎者扱いしてバカにしていたのも、印象に残った。映画とは離れるが、工業が発展し労働者が溢れるドイツ・フランス・英国等では彼らの理論は十分受け入れられず、工場労働者が殆どいない馬鹿にもしたロシアで彼らの理論が重宝されたのは何とも皮肉。
マルクスの妻イェニー(ビッキー・クリープス)はドイツの有名な貴族出で彼はそれを大いに自慢にし、妻もマルクスの最大の理解者で応援者。エンゲルスの恋人メアリー(ハンナ・スティール)アイルランド出身の工場労働者で運動家で、独立した存在で有りたい、子供は妹との間で作れば良いとか言う先進的?な女性。2人の女優の演技が魅力が放ち、この映画を素敵なものにしていた。
製作ニコラ・ブラン、レミ・グレレティ、ロベール・ゲディギャン、 ラウル・ペック、
脚本パスカル・ボニゼール、ラウル・ペック。撮影コーリャ・ブラント、編集フレデリック・ブルース、音楽アレクセイ・アイギ。
出演は、アウグスト・ディール(カール・マルクス)、シュテファン・コナルスケ(フリードリヒ・エンゲルス)、ビッキー・クリープス(イェニー)、オリビエ・グルメ(ジョセフ・プルードン)、ハンナ・スティール、アレクサンダー・シェアー、ハンス=ウーベ・バウアー、ミヒャエル・ブランドナー、イバン・フラネク、ペーター・ベネディクト、ニールス・ブルーノ・シュミット、マリー・マインツェンバッハ。