「あまりにも荒唐無稽。しかし、エマ・マイヤーズの可愛さに乾杯!」マインクラフト ザ・ムービー 緋里阿 純さんの映画レビュー(感想・評価)
あまりにも荒唐無稽。しかし、エマ・マイヤーズの可愛さに乾杯!
【イントロダクション】
《世界で最も売れたインディーゲーム》として2014年にギネス記録にも認定され、2023年には売上本数3億本を突破した『マインクラフト(通称:マイクラ)』の実写映画化。3Dブロックで構成された世界で、創造力・想像力を駆使してサバイバルを繰り広げる。
主演に『ジュマンジ』シリーズのジャック・ブラック、『アクアマン』(2018)のジェイソン・モモア。
監督に『ナポレオン・ダイナマイト/バス男』(2004)、『ナチョ・リブレ 覆面の神様』(2006)のジャレッド・ヘス。脚本にクリス・ボウマン、ハベル・パーマー、ニール・ワイドナー、ギャビン・ジェームズ、クリス・ギャレッタ。
【ストーリー】
幼い頃に鉱夫に憧れ、採掘(マイン)することを夢見ていたスティーブ(ジャック・ブラック)は、会社員としてドアノブを売る日々に嫌気が差し、幼い頃に夢だった採掘の為に鉱山を訪れる。
夢にまで見た採掘作業を楽しんでいると、スティーブは謎のキューブとそれを納めるクリスタルケースを発見する。2つを合わせると、異世界へ通じるゲートが開き、四角形の物体で構築された世界“オーバーワールド”へと転送される。
オーバーワールドでは創造性が鍵を握り、頭で考えたものを何でも創造(クリエイティブ)出来る。世界の仕組みを理解し、自由に創造を楽しむスティーブは、狼のデニスと親しくなる。
しかし、ブタのモンスター・ピグリンが住む暗黒の世界“ネザー”を支配する魔女・マルゴシャは、キューブの力を悪用してオーバーワールドの征服を企てていた。
スティーブはデニスにキューブとクリスタルを渡し、現実世界の自宅へ隠すよう指示する。無事に現実世界へとやって来たデニスは、指示通りキューブとクリスタルをスティーブのベッド下に隠すが、やがて家主不在により、スティーブの私物は競売に掛けられる事になってしまう。
古びたビデオゲーム店を営むギャレット(ジェイソン・モモア)は、かつてアーケード・ゲームのチャンピオンとして君臨し、“ザ・ガベージ・マン”の愛称で親しまれていた。しかし、現在では店の経営も上手くいかず、立ち退き命令を言い渡されてしまう。
一発逆転を狙うギャレットは、友人のダリルが催すコンテナ・オークションに参加。目当ての商品は空箱だったが、偶然にもキューブとクリスタルを手にする。
ナタリー(エマ・マイヤーズ)とヘンリー(セバスチャン・ハンセン)の姉弟は、母の死後、遺志を尊重して街へと引っ越してきた。彼らを案内した不動産業者のドーン(ダニエル・ブルックス)は、動物園を開く事を夢見ており、移動動物園として車にアルパカを乗せている。
ヘンリーの転校初日、彼は登校前にギャレットの店に寄り、彼と知り合いになる。転校後初授業となる美術ので、ヘンリーは持ち前の独創性を発揮するが、クラスメートや先生に批判されてしまう。自らの発明が実現可能だと証明する為、ヘンリーは即席のジェットパックを作るが、クラスメートのイタズラによりジェットパックはナタリーの職場であるポテトチップス工場に直撃してしまう。
ナタリーに申し訳が立たないヘンリーは、ギャレットに叔父と偽って迎えに来てもらうよう頼み、彼の店で展示されていたキューブとクリスタルを手にし、2つを合わせてしまう。
ヘンリーの行方を案じたナタリーは、唯一頼れるドーンと共に、ヘンリー達が向かった鉱山へ向かう。
鉱山で合流した4人は、キューブに導かれオーバーワールドへと転送されてしまう。
キューブが再びオーバーワールドに戻った事を察知したマルゴシャは、捕えたスティーブを解放し、彼にキューブを持ってくるよう命じる。
スティーブの助けによって窮地を脱した4人だが、元の世界へと変える為に必要なクリスタルケースが破損してしまう。クリスタルケースを再び入手する為、5人はクリスタルが保管されている“森の洋館”へ旅立つ事になる。
【感想】
私自身は原作ゲームをプレイしておらず、Vtuberの実況動画でおおよそのゲーム内容を把握している程度のマイクラ初心者。とはいえ、本編に登場するキャラクターにはクリーパーやゾンビ、エンダーマン等、見覚えのある顔もチラホラと居た。
そんな私が、本作を鑑賞して抱いた感想は
「「「くっだらねぇwwwwww」」」
である。いや、これは立派な褒め言葉だ。
そもそもがクラフトを楽しむ為の荒唐無稽な設定・世界観のゲームなので、ストーリー性などはあったものではないのだが、それを気楽に観られるポップコーン・ムービーとして成立させたのは見事だと思う。ツッコミ所満載だが、そもそも真面目なスタンスで鑑賞するような作品ではない為、気軽に楽しむのが吉だろう。
また、くだらない内容だが、出演陣の豪華さや高いクオリティのCGによって描かれるマイクラワールドには画面を持たせる画力があり、最後まで観客を牽引して鑑賞させてくれる。
とはいえ、あまりにも荒削りな作品なのは間違いない。まだ創造(クラフト)途中かな?
ストーリー構成自体は、メインの目的は「異世界を救う」というシンプルなものなのだが、登場人物の過去や関係性、破産を逃れようと鉱山にあるダイヤを取りに行こうとするギャレット等、中途半端に入り組んでいる。その割にキャラクターとしての葛藤や成長が弱く、取って付けたような印象を受けた。
特に、ジェイソン・モモア演じるギャレットは、かつてアーケード・ゲームの王者だったという設定があり、本作もゲーム原作の作品なのだから、クライマックスでは当然その特技を活かした活躍が用意されているものだろうと期待したのだが、その要素は全くと言っていいほど活かされておらず、単なる設定や挫折を描く材料としてしか機能していなかったのは非常に残念だった。
また、ドーンに至っては、そもそも登場させないでも話が成立してしまう程、その存在意義が薄いキャラクターであった。
「存在しなくても話が成立する」で言うと、副校長のマーリーンと、オーバーワールドからやって来たニットウィットのロマンスは完全に不要。都度彼らの出合いやデートシーンが挟まれるのだが、そのくだらなさを笑えれば良いが、ハマらない人にはひたすらノイズにしかならないだろう。
ドラマとしても、オーバーワールドで才能を開花させたヘンリーと、同じくオーバーワールドに居場所を見出していたスティーブの「元の世界へ帰るか?」という問題には、もっと真剣に取り組んでほしかった。
最終的に、皆現実世界へと帰還し、それぞれが新しい居場所を得たり、夢を叶えて成功して、めでたしめでたしで終わるので、鑑賞後の気持ちとしては悪くない。だが、それは非常に安易な方法で誤魔化されたに過ぎないという印象は拭えない。
このように、101分という鑑賞しやすい尺に対して、あまりにも入り組んだ設定や無駄なシーンが多く、それらを煮詰めて整理し、無駄を省けば90分以内の尺にすら出来てしまったのではないかと思えてしまう。いや、出来ただろう。
正直な話、この作品があの抜群の完成度の高さを誇った『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(しかも、こちらは上映時間92分)』(2023)の北米オープニング興収1億4600万ドルを超え、テレビゲーム原作映画として歴代最高のオープニング興収1億5700万ドルを叩き出したとは信じられない。批評家が酷評したのも頷ける。
そんな本作において、唯一手放しで絶賛出来る点が1点ある。それは、ナタリー役のエマ・マイヤーズだ。
とにかくエマ・マイヤーズが抜ッ群に可愛い!!可愛いッッッ!!(大事な事なので2回言う) 「何をしていても可愛い」という、その暴力的なまでの可愛さに、一気に大ファンになってしまった。
彼女を劇場の大スクリーンで観る為だけでも、鑑賞料金分の価値があると言っても過言ではない。私の評価点の大半は、彼女の存在によるものである。
だからこそ、弟ヘンリーの保護者としての苦悩や、亡くなった母への思い等は、単なる設定や取って付けたドラマ以上の印象は受けなかったので、もっと煮詰めて活躍させてほしかった。
キャリア史上最もボンクラで雑魚キャラを演じるジェイソン・モモアのはっちゃけぶり、コメディの名手ジャック・ブラックの安定したコミカルさも、興味の持続という役割を果たしていたようには思う。ジャック・ブラックの無駄に高い歌唱力が、くだらない溶岩チキンミュージックやデニスとの別れの歌を聴かせるものにしてしまうのも悔しいが面白かった。
そう、やはり気楽な気持ちで鑑賞するのが1番の作品なのである。
【総評】
荒唐無稽なストーリーや世界観は、まさにゲームをしているかのような感覚で、本作をキッカケに原作ゲームは更に売り上げを伸ばすことだろう。
批評家の予想を上回る特大ヒットとなった事で、問題なく続編が製作されるだろう。出来れば続編では、もう少しストーリーテリングにも力を入れてほしい。
何よりも、今後のエマ・マイヤーズの更なるブレイクに期待大!!
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