天才作家の妻 40年目の真実のレビュー・感想・評価
全28件中、1~20件目を表示
妻がブチ切れた後の言動は、いっそ爽快
スウェーデンとアメリカとイギリスの合作映画
邦題が俗っぽくて損をしている
原題のThe Wifeのままの方が内容にあっていると思う
ノーベル賞を受賞して、メダル授与式やあちこちのパーティーなどに
引っ張りだこの浮気者のさっか小説家の夫の妻が実は夫のゴーストライターで・・・
妻の心の機微がメインの話
71歳とは思えぬ知的な美貌のグレン・クローズの演技が凄い
でもたまに、何を考えているのかわからない
ぼうっとした表情になったのが少し気になりました・・・
集中力が切れたのかな
後は、役を役と思わせない真実味のある演技で好演
女性目線で見ると、共感できる部分が多く人物としても魅力的
略奪婚ですけどね・・・
ジョゼフ役のジョナサン・プライスも、
発想はいいけれど小説家としての技量がおいついていかなくて
才能豊かな妻に対する劣等感から浮気を繰り返していて
なんだか頼りなげな夫を上手く演じている
夫を立てる、って日本人っぽい感覚
そしてスピーチの度に、夫が妻に感謝の言葉を捧げるのは
あちらの人の感覚っぽい
最初は夫のスピーチを、複雑な心境ながらもにこやかに
聞いていた妻ジョーン
ジョゼフ「妻は(小説を)書きません」( ー`дー´)キリッ
の不用意な一言でキレる
そりゃあ腹立つわ
ずっと、夫の力不足の小説を形あるものにしていたのは
彼女なのに
ふたりが若くてジョーンがジョゼフと知り合った頃の話が時々回想シーンで
入るのですが、当時は女性が小説を書いても、内容の
良し悪しに関わらず世間的には認めてもらえない時代だった
・・・だから、ジョーンは着想は優れているけど筆力に欠ける男の
妻になり、ゴーストライターになる事を選んだ・・・
実質的には「主夫」をやっていた夫
子供たちが成人するまでずっと事実を隠しおおせていたというのは
無理があるんじゃないかと思いました
小説家志望の息子がまた、女漁りこそしないものの
父親とイメージ被るのね
しっかりもののお母さんであり、妻であったジョーンが
ブチ切れて後の言動は、あぁわかる~わかる~その気持ち
のオンパレードで、いっそ爽快なほど
脚本が女性だそうで、よく女心をわかっている
前妻に対するジョーンの気の使い方も、自然で良かった
イヤミっ気がなくて
浮ついたダメ男としっかりものの女のコンビって
意外とよく見かける
お互い、必要とし合っているんだなきっと
依存関係とは思いたくないけど・・・
ラスト、あんな終わり方で、
ジョーンはその後、どうしたいのか
何か付き物が落ちたようにさっぱりしているようにも思える
立場は「ノーベル賞をとった夫の妻」のままで亡き夫を立てて、
今後は自分の名で執筆活動を続けていくのかな
そうだといいな、と思いながらエンドロール観てました
そりゃお互い鬱憤溜まるよね!
愛してるのも事実、でも同じくらい嫌いなのも事実。
夫は妻に大きな屈辱感を持ち、妻は夫の生活に目をつぶり、40年やってきた…
が、そういった心の内面がノーベル賞受賞を機に表に出すぎてしまう。でも受賞しなければこの夫婦はそれなりに平和な人生を送り続けたのかもしれないなぁ。ストレスが溜まっていたジョゼフが発作を起こすってこともなかっただろうし。
思ってたのとは逆の美しい終わり方だった。
あと原題のままのほうが…よかったなー……
不満は貯めといちゃダメだね
ノーベル文学賞を受賞した天才小説家は実は、奥さんがゴーストライターをしてて、そんな夫婦の複雑な感情を描いた話。
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ゴーストライターと言っても完全に全部奥さんが作ってる訳じゃなくて、旦那さんの着想を元に具体的に文章にするのが奥さん。
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文才はあっても女性ということでキャリアを諦めたとはいえ、別にこれなら最初から夫婦共作で出版すればよかったのに。
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旦那の浮気癖のせいで喧嘩してたのに、孫が生まれたとわかると幸せだと2人ですぐに抱き合うところが印象的だった。喧嘩しては仲直りして、夫婦ってそんなもんなんだろうな。熟年夫婦の感じがすごくわかった。
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奥さんの方が才能あって屈辱だったみたいなことを旦那さんは言ってたシーンは、なんとなく『スカーレット』思い出した。同じ仕事をしてると比べちゃうから難しいね。
夫婦のカタチ
夫がノーベル賞を受賞しても内心では喜べない、当然だろう。「これは私がもらうべき賞よ」と叫びたいだろう。なのに夫は後ろめたさを何も感じていない。
受賞式の前に夫の浮気の証拠(浮気の手前だったが)であるクルミを見つけて喧嘩になった最中でも、孫の誕生の知らせを受けて2人で抱き合って涙する。受賞式のスピーチを聞いて怒りの頂点に達したジョーンは離婚を決意するが、発作を起こして倒れた夫にはやはり愛情を示す。
不倫の末の略奪愛、許せない気持ちはあっても、やはり愛しているのだろう。ゴーストライターというよりも、夫婦の共作だろう。どちらか1人ではノーベル賞受賞ほどの作品は生まれなかったのではないか?
ラストの飛行機の中での妻の表情はどう解釈していいものか、後に暴露本でも自分で書くのだろうか。ノーベル賞を貰っておいてそんな事は出来ないとは思うが。
演技旨い!
グレン・クローズ、ジョナサン・プライス、双方本当に長年連れ添ってきた、そして子供にさえも秘密を隠し通してきた絆がある本当の夫婦のように思える演技でした。才能ある妻ながら女流作家は大成しない当時の社会的環境、着想はありながら、才能ない夫、二人の合作?で紡いできた名作の数々。しかし、夫の浮気による痛みから生み出してきた名作でもあった。今更我慢できなくなり、離婚て!とも思うが、わかりきっていてもノーベル賞受賞の段になって、本当は自分が書いてきた、なのにその場でも浮気を重ねようとする、身の回りの世話も焼かせる夫に我慢できなくなるのは、よく分かる。息子は単なる我儘ドラ息子の気もする。若かりし頃のクローズを演じた女優はかなり似てると思ったら実の娘だった。ノーベル賞の裏側も見れた気がした。スレーター久々に見ました、死んでしまってはクローズが語らない限り、真実は一切語られないだろう。面白い発想の映画でした。
天才女優の不運
ノーベル賞を受賞した作家。
長年支え続けてきた妻。
老夫婦には、ある秘密と真実が…。
夫の昔の作品は“別人”のように酷かった。
妻は文才があり、かつて作家を目指していた。が、女性が作家として生計を立てていく事は困難だった時代…。
そんな時、二人は出会い…。
夫は名作家と持て囃される一方、浮気性。
それを知りつつ、表に出さない妻。
が、遂に崩壊。
内心うんざりしていた夫への不平不満が爆発。
栄えある舞台の裏で、修羅場が展開。
夫となかなか作家として芽が出ない息子の確執。
さらに、思わぬ悲劇が…。
暴露話と夫婦の愛憎劇。
現在と過去が交錯、フリーライターが迫りサスペンスフルでもあるが、ありがちで安易に予想付く。
“ゴースト”になった経緯、甘んじた現状など描き込みが一歩足りず。
一見理想的な夫婦が…というのが、一見芸術性の高い人間ドラマに見えて実は犬も食わぬ夫婦喧嘩話に何だかリンクしているのが皮肉。
内容や作品的には少々平凡作だが、それをカバーしたのは演者たち。
ジョナサン・プライスやお久クリスチャン・スレイターもさることながら、
本作で7度目のオスカーノミネート。
序盤の控え目な良妻から徐々に。表情一つ、感情一つ、もはやグレン・クローズの土壇場!
これでもオスカー獲れぬとは…。
さながら、“天才女優の不運”である。
妻が得たかったものは
ジョーンとジョーが惹かれあった背景には
ジョーの浮気癖、、、という単純な話ではなく
女流作家が受け入れられない時代だったことが大きかったはず
ジョーンが作品を生み続け、ジョーが賞賛されてきた夫婦の40年という節目でノーベル文学賞を受賞
二人三脚、合同出版、、、なんて都合の良すぎる言葉だろう
光と陰がハッキリ、クッキリ 映像からもジョーンの心情からも溢れ出ていた
心臓発作、ジョーの死がなかったら、帰国後、本気で離婚していたかもしれないが、、、汗
最後まで『ジョーを立てるジョーン』という体裁を保ち続けられたのは、
夫を愛しているから というだけの理由ではなく
ジョーンが自分自身の夢と向き合えた40年間が自分自身の支えとなっているからかなと感じた
この映画
男性の単純さ、女性の複雑な心理状況 など、
共感ポイント多数で面白い
家事や子育てこそノーベル賞もんだよね?って話。
完全に邦題のミスリードにやられてしまった。
かなり最後の方まで、ゴーストライターである妻:ジョーン(グレン・クローズ)に感情移入して観ていた。
糟糠の妻:ジョーン。苦労したんだねー。
いや待て。
ジョーンが小説を書いてる間、
家事や子育て(専業主夫)をしたのは夫だ。
本作は、
専業主婦で夫を支えた妻が、
夫の退職後に氾濫を起こす
『山田洋次監督作のトリッキーバージョン』だと思えばいい。
上記したように、実質的な糟糠の妻:夫であるジョナサンである。
まさに専業主夫で、才能ある妻が小説を書くのを影で支えたんだ。
山田洋次監督作品なら妻は「離婚します」と出て行くが、
本作では「家事や子育ての仕事(専業主婦)は大変であり素晴らしい。ノーベル賞もんだ!」と言っている。
陰で支えている妻の仕事を、評価しようというのだ。
だって主婦は9時~5時の仕事じゃない。24時間だ。
土日はない。
だからこそジョーンに「私は1日8時間書き続けた」と、
わざわざ「8時間」と言わせてるんだよね。
夫はそれ以上の時間を、家事や子育てにあててるぞ!と。
だからグレン・クローズに感情移入して
夫ひでーってなってる人がいたら、
それは、外に出て8時間働く夫を評価して、
家事や育児(専業主婦)をし、夫を家庭を支える妻を軽んじている人だ。となる。
なんて巧い脚本だ!
アカデミー作品賞にノミネートされてないなんて、どうかしている。
グレン・クローズ
グレン・クローズ あまりにも素敵です。
彼女の表情が全てを物語っています。こんな女優が存在するのですね!感動です!
様々な当時の時代背景が根底にあるのですね。今でもあるのでしょうね!
天才作家は最後、死にますので事実が世間に知れ渡ることはないようです。個人としては、夫婦の行く末、家族の葛藤、世間の評価を観てみたかったです。 物語としてはこれがベストなのだと思いつつ!!!
名演技は必見!
役者さんの迫真の演技は必見!
回想シーンの役者さんがそっくりすぎてちょっとびっくりした。
年老いてもセックスライフがあるって海外はすごいなと思いきや、夫は浮気者!
しかも、やっぱりゴーストライターかーい!
嘘をつく選択をして捨てないでと縋ったのは妻だけど、お互いの歯車は間違いなく狂い始めて…。
才能がある妻に名前だけ貸して書いてもいない作品で絶賛される辛さを浮気で晴らす夫。
そんな夫に対する怒りを書くことにぶつける妻。
それで名作が生まれて賞を受賞したわけだけど、やっぱり妻は心に蓋をしすぎたのね。
「妻は書かない」の一言にこころのダムは大崩壊!
受賞したメダルを押し付けあってタクシーの窓からポイするシーンは笑ってしまった。
最後はまさかの展開でびっくりしたけど、うーん、やっぱり愛はあったのかしら。
妻を演じるグレン・クローズが良い!!
グレン・クローズと言えば思い出すのは「危険な情事」
不倫相手の妻子ある男性を執拗に追い回す恐ろしい女を演じていた
あの映画はかれこれ20年目以上になるが
今回は夫に献身的に尽くす妻の役を演じている
ノーベル文学賞を受賞した夫が妻と共に
授賞式に参加するところから物語が始まる
ここまでなら何て嬉しい素晴らしい話かと思いきや
実は妻は夫のゴーストライターだった
と言う秘密が観ているものを驚かせる
(私は予告編を観ていなかったのでびっくり)
タイトルは忘れたが
妻が夫の代わりに絵を描いて夫が名声を得る
と言う映画があったが
男と言うものはそこまでして名声を得たいものなのか
妻もなぜそこまで尽くすのか
昔はまだまだ男性優位の世界だ
もし夫に捨てられたら一人では生きられない
女性の作家などありえない世の中でもあったのだ
授賞式の間での妻の心の変わりようを
グレン・クローズが見事に演じている
スピーチをしている夫を見つめるグレン・クローズの
演技には夫への憎しみや怒りが湧き出ていた
本当に凄かった
後半の2人の争いはとにかく凄かった
あれは長年連れ添った夫婦でしかわからないかもしれない
でもやはり彼女の根っこには夫の愛があったのだろうか?
それを思わせるラストのように感じたのだが
2人の真実を調べようとする人物をクリスチャン・スレーターが
演じていた
私はかつて彼の大ファンで若き頃の彼の作品は良く観ていた
なので彼が登場した時は嬉しさと懐かしさがこみあげた
グレンクローズ渾身の。
オスカーとってほしいなグレンクローズ。
(とれませんでしたね…残念。撮らせてやれよと思いましたよ)
映画の感想を一言で述べるならば、おうおうゲス夫は死んで逃げんのやな。最後までひきょったれのまんまかい。この…(お好みの罵りワードを入れてね)!!!!!
です。
死亡オチは、ゲス夫を甘やかす結末だとわたしは思います。
が、まぁ、ああなりますよね。
ジョーンが選んだ道は、ゲス夫のせいだし、ジョーンのせいだし、時代のせいだし、多分ジョーンの親とかのせいもあるでしょう。
ジョーンは自分の責任もわかってると思うので、40年影武者としてやってきたんでしょう。
そして書くことの喜びや書かずにいられない自分の欲望を叶えるために自ら選んだ道です。
なのでゲス夫を全面的に攻められやしないですよ。
あの手の男を心底憎むわたしでもそのくらいの理性はあります。
でもでも、ジョーンには他に選びようがなかった。
他に選べたならば、彼女は自立したはず。
その才覚は十分にあったわけですから。
女だったから塞がれた道を思うと、ゲス夫がまーじーで許せないです。
ゲス夫の中の人はゲームオブスローンズのハイスパロウのひとですね。今後はハイスパロウをだだっ子の浮気症ゲス野郎としてみてしまいそうです。
若い頃のジョーンがえらい雰囲気グレンクローズに似てるわーと思ったら、実の娘さんだそうで、そら似てるわな。
若ジョーンの大学に公演に来た女性作家役のひとは、ダウントンアビーのコーラでした。
天才...
疑問。
なんで今まで夫のゴーストライターとして40年近く生きてきた妻がノーベル賞受賞の旅で愛想を尽かすのか。
愛してたからやってたんだよね。
「妻は書かない」とか糖蜜の妻とか今までに散々言われてると思う。
浮気も。
今更感が。
なぜ今切れたのか、離婚になるのか。
心臓発作の所為で上手く纏められちゃった感があるけど。
不思議だ。
あの歳で母にお小遣いもらってる切れやすい長男も不思議だけど。
でもさすがにグレンクローズ素晴らしかったです。
フェイク?フェイクのフェイク?そのまた…
ノーベル文学賞を受賞した夫ジョゼフ(ジョナサン・プライス)と、その妻ジョーン(グレン・クローズ)。2人は授賞式に臨むためにストックホルムに向かう。しかし、その機中で2人に声をかけた記者のナサニエル(クリスチャン・スレーター)は、「ジョゼフの小説はずっとジョーンが書いていたのではないか?」という疑いを持って、夫婦に近付く。
冒頭に書いた謎がある。だが、作家の創作に関わる謎は、予告編などでも出ているし、中盤ぐらいで見えてくる。
やがて観ているほうは気付く。真の謎は、その関係を40年も続けてきた、この夫婦2人の心なのだ、と。その点で、本作は心理劇なのである。
劇中、派手なアクションがあるわけでも、美男美女が活躍するわけでもない。
しかし、ひとたび幕が上がればまったく飽きさせない。
物語の強さ、人の心の謎に迫るセリフ(脚本)、繊細な演出、そしてそれらを実現する役者の演技、すべてが素晴らしい。
傑作である。
夫のジョゼフは女にだらしない。妻のジョーンは、そんな夫の浮気を許してきた。
ストックホルムでもジョーンは、授賞式をはじめいくつものセレモニーに追われるジョゼフを細やかに気遣う。つまりは良き妻なのであるが、だが話はそう単純ではない。
この夫婦は長年、秘密を共有してきたゆえに、それぞれ複雑なメンタリティを抱えている。
夫には「書けない」という欠落が、妻には「女性では本を出せない」という欠落がそれぞれにあり、お互いが、歪んだ形で相手を必要とする関係にある。
そういう意味では、この2人には、他の夫婦には決してない強い絆があるのだ(これはラスト、飛行機の中でCAがジョーンに語りかけるセリフに表されている)。
例えば、「君が大切だ」というセリフ1つ取ってみても、この夫婦の会話では何通りもの解釈が可能だ。「本心なのか?」「その場しのぎの言葉なのか?」…
つまり、「これはフェイクか」「いや、フェイクのフェイクか」と勘繰りながら観る面白さが本作にはあって、このことが、本作を観る体験を何重にも豊かに、楽しくさせるのだ。
この複雑で、根深くて、一筋縄ではいかない2人の関係を、本作ではノーベル賞の授賞式でストックホルムに滞在する数日間にぎゅっと凝縮させて描いている。
やがて訪れるクライマックス。
はっきり言って、夫にも妻にも感情移入は出来ない。それでも、ここでの2人の会話シーンには心を揺さぶられる。
帰りの飛行機のシークエンスは、行きの飛行機と対を成す。アメリカに戻ったら家族での話がある、と妻は言う。そういえば、出発前にも家族のシーンがあった。そう、見事な円環構造である。
クリスチャン・スレーター演じる記者とジョーンの、達人のチェスを見るようなウィットに富んだ会話の応酬シーンも楽しい。知っているようで知らない、ノーベル賞の舞台裏も興味深く、見どころも多い。
若い頃のジョーンを演じている女優が、グレン・クローズと雰囲気もよく似ているなあ、と思ったら、何と実の娘とのこと。びっくり!
内助の功
海外の興行状況はかなり良いみたいですね。海外でも日本でも観客は50代以上の女性が多いのではないでしょうか。才能があっても女性だからといって夢を諦めざるを得なかったジョーンの様な女性が劇場に来ているのではないかと推察します。私は未婚ですが、例え「妻の内助の功があったから」と建前を言われたとしても全く嬉しくないです。ジョゼフに利用されただけの人生だったなあなんてムカついてしまいますね。だから辛辣なラストを期待していたので、物足りなく感じてしまいました。私だったら、もっと酷い仕返しするのになあ。
社会が思い描く「妻」という幻像。
描かれるのはノーベル賞の授賞の報せを待つ真夜中から授賞式を終える帰りの便までの数日。しかしその数日だけで「女の一代記」ともいえるほどジョーン・キャッスルマンという女性の人生を感じさせられた。現代より更に女性の社会進出が困難だった時代に野心を抱いた女がいかにして生きたのかや、何を諦め何を犠牲にして何を手に入れたか、逆に何を手に入れ何を失ったかが克明に語られ、ホテルの一室で交わすやり取りだけで夫婦の長い歴史と女の人生が浮き彫りになる。ミステリーのようでもあり、サスペンスのようでもあり、やっぱり女の一代記だと思う。
ジョーンは“ジョー・キャッスルマン”として出版してきた自分の著作とそのキャリアがノーベル文学賞を与えされたことに素直には喜んでいただろうと思う。祝福の言葉が夫に投げかけられるのだとしても。それでも自分の存在が「糟糠の妻」やら「内助の功」なんていう決まり文句で片付けられてしまうことに嫌気もさしていたのではないか。何か名声を手に入れた男を見れば、よく知りもせずにその妻を「内助の功」と呼び、世間はまるでそれが誉め言葉であるかのように考えてさえいたりする。
とは言え“ジョー・キャッスルマン”の著作は紛れもなくジョーとジョーンの二人で書かれたものだろう。才能の多くはジョーンから注がれているのだとしても、しかしそこにジョーが存在しなければ書くことのできなかったものだ。それは彼の浮気癖という不名誉なインスピレーションという意味だけでなく、実際にジョーの筆の感性も作品には注がれているから。それに夫ジョーを紛れもなく愛しているし、尊敬もしている。だからこそ余計に嫌気がさす瞬間があるのかもしれないと思う。ノーベル賞は"ジョーン・キャッスルマン"の名前では決して手に入れられなかった栄誉であり、夫ジョーの名前と才能とそれこそ「内助の功」なくしては成し遂げられなかった名誉だと思い知るから。
この映画に見所は多々あるが、この社会において、男であること女であること夫であること妻であること父であること母であることなどといった概念がいかに人を縛っているのかを痛感させられた。社会は、男には男であることを期待するし、女には女であることを期待する。父は父らしくあれと期待するし、作家の妻は作家の妻らしくあれと無意識に期待する。でもそれって一体何なんだろう?と思う。この映画から極めて社会的な問いかけを強く感じた。
そういう観点からすると個人的には「天才作家の妻」という邦題は意味がぶれるように思う(観客をミスリードさせる効果はあるが)。シンプルに「妻」とだけ記した原題の方が寧ろ言い得て妙。主人公ジョーンを意味するだけでなく、その奥に社会が期待する「妻」という幻像まで浮かび上がるようで。
いろいろ書きすぎてグレン・クローズのことを書き忘れた。決して派手な演技を見せているわけではない。この映画でクローズが見せる演技は「ACT」というより「REACT」が多い。特に前半はクローズをある種蚊帳の外にしながら出来事が起こり、クローズはそれにリアクトする。そんな中で妻ジョーンの心が動く瞬間にカメラがぐっとクローズのアップを捉えじっくりと見つめる。そしてクローズは物言わず表情だけでジョーンの思いの変化を語る。こういう演技はやっぱり実力者でなければできない。キャリアの長く実力も申し分ないクローズならばもう間違いない。監督もそう思ってクローズのアップに全てを委ねたのかもしれないし、まさに英断。クローズがアップになっている間、息が止まるような思いになる。
どこかヨーロッパの映画を観ているような佇まいもあり、とても知的な大人の映画体験だった。この物語は演劇に作り替えても面白いかも知れない。いっそ高級ホテルの寝室のみを舞台にした一幕物で、登場人物も夫と妻の二人だけ・・・なんて空想を膨らませてみたりして。
ファミリーヒストリー
夫婦げんかのキッカケや攻守交代のリアルさ。その気分を抑えたり噴出したりが面白い。
困惑の中のご臨終が見る側に複雑な感情を抱かせる。
クリスチャン スレイターの軽さがとてもいい。
これからの健筆に期待
舞台を見ているような心理劇。ゴーストライターをどのように考えるかだが、他者に無理に書かせることはできないだろうから、ジョセフだけを責める気にはなれない。きらいだけど離れられない、いやだけど一緒にいたい、という関係性だったのかなと考えさせられる。若い頃の映像では、付き合いだした頃から既にそうだったようで、そういう形でつながっていくしかない夫婦のかたちもあるのか、ともやっとした感じが残る。救いは米国に戻る機上でジョーンが開いたノートの真っ白なページ。今後さまざまなアイデアや構想で埋まり、本当の創作活動が始まることを予期させる。
全28件中、1~20件目を表示