「母親の執念」人魚の眠る家 プライアさんの映画レビュー(感想・評価)
母親の執念
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西島と篠原の娘がプールで溺れて脳死。
しかし夫婦は臓器移植を選ばず、篠原が自宅介護することとなった。
会社経営の西島は金持ちで、横隔膜手術を受けさせ呼吸器が不要になる。
さらに電気的に娘の筋肉を動かして代謝を上げる研究を、部下の坂口に任せる。
根っからの技術者の坂口はそれに没頭、かなりの効果を上げる。
PCの操作で娘の手を自由に動かし、笑顔も作ることが出来るようになってた。
西島の中では娘はもう死んでたが、生きてると信じる妻のためだった。
しかしさすがに異常だと感じ始める。周囲の人達もそうだった。
篠原の妹親子は、篠原の前だけで篠原の娘が生きてる演技をしてただけ。
母は少しは篠原を理解していたが、やはり異常性は感じ始めてた。
やがて篠原は娘を車いすで外に連れ出し、周囲の人に娘として扱わせ始める。
さらに息子の入学式にまで連れて行き、息子はそれで同級生から気味悪がられる。
だから息子の誕生日には誰も来ないが、篠原は無理に連れて来させようとする。
息子はイヤだと泣き叫び、さすがに西島が篠原に厳しく本音を言う。
娘は死んだのだと。すると篠原は逆上し警察を呼び、娘に包丁を突き付ける。
死んでるのなら刺し殺しても罪にならないよね、どっち?と。
そんなこんなを経て篠原も一種の洗脳状態からは脱する。
それでも娘の介護は続けてたが、ある日の夢で娘がそれまでの礼を言いに来る。
それで満足し、人を助けたがってた娘に代わり、臓器移植の決断をする。
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人は思い込むと周りが見えなくなり、延々エスカレートし続けることがある。
全くわがままな性格でなく人を尊重できる篠原も、その罠に陥ったという話。
大切な娘やから、気持ちは分かるけどね。でも西島のセリフが全てやと思う。
「娘はおれ達の中で生きてればいい、それを周囲に押し付けるな」。
誕生日の息子に対する振舞いもそう、警察への対応だってそう。
何で娘が生きてると周囲に認めさせる必要があるのか?
全く理解は出来ない。でもエスカレートって大体そういうこと。
何を信じても、どう行動しても、他人を巻き込まないうちはいい。
でも、そんな自分を正しいと認めて欲しいって欲求は必ずあるんよな。
正しいかどうかは自分で判断すれば良い。
世間とか多数派とか偉い誰かに正しいって言ってもらう必要はない。
脳死とかそういう難しい話以前に、それが最も大切なことだと改めて思った。