劇場公開日 2018年11月16日

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「生と死の境界線」人魚の眠る家 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5生と死の境界線

2018年12月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

難しい

生と死の境界線はどこにあるのか、そんなことをずっと考えながら見ていました。

愛する我が子の死を受け入れられない母親の気持ちは、察するに余りあります。そんな母親が一縷の望みをかけて延命措置を希望し、最先端科学に頼る気持ちもよくわかります。その願いを受け、若い科学者が希望を夢見て研究に没頭していく姿も、共感的に受け止めることができました。

しかし、それが脳死者の肉体的健康を維持する目的を超え、周囲の人間の願望を具現化するための操り人形と化してしまえば、そこにはもう人間の尊厳など存在しません。あるのは生身の人間を傀儡とする狂気だけです。そんな異常さを感じてからは、もう共感などできず、あとはずっと第三者として傍観、いやむしろ引いて見ていたと言ってもいいでしょう。

かたくなに「死」から目をそらし、必死で「生」にすがりつき、しだいに壊れていく母親を、篠原涼子さんが熱演していて、実際そうなってしまうのかもしれませんが、それがどうも空回りし、暴走しているように感じられてしまい、共感できませんでした。娘の「生」を必死にアピールするかのように連れまわしていたのに、終盤でがらりと心情が変化するのも、イマイチ腑に落ちなかったです。

ただ、奇異な行動の理由が明らかにされ、それには十分納得でき、心のどこかでは娘の死を受け入れていたのだと思い、ちょっとホッとしました。ラストも予想どおりの決着のつけ方でしたが、無難な落としどころだと感じました。

人の生死を操作するような研究は、科学の進歩か暴走か。いま一度、一人一人が考える必要があるように思いました。

おじゃる