「サイヤ人戦歌」ドラゴンボール超(スーパー) ブロリー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
サイヤ人戦歌
『Z』から『超(スーパー)』へ!
『ドラゴンボール』新シリーズ初の劇場版で、通算20作目。
さて、その『ドラゴンボール超』、『~神と神』『~復活の「F」』の話をもう一度繰り返した最初の頃はあんまり面白くなかったが、“未来トランクス編”辺りから面白くなって来て、あのフリーザもメンバーに加え、最強のジレンら他の宇宙の強者たちと生き残りを懸けて壮絶なバトルを繰り広げた“力の大会編”は、かつてのように毎週楽しみになるほどだった。
“力の大会”を終え、再び修行に明け暮れる悟空とベジータの前に現れたのは…!
前作のフリーザの復活には驚きだったが、今回はさらに驚きの、“復活の「B」”!
劇場版第8作目『~燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』で初登場し、その後も2度登場してZ戦士たちを執拗に苦しめたあのブロリーが、装い新たに復活!
これには全王様もオッタマゲ~!
今回のブロリー、名前は同じでも、全く別人のブロリー。
設定も何もかも一新。
本当にブロリー?…と思うくらいの素朴で純粋で善良な一面も。
パラガスを「お父さん」と呼ぶ。
地球にやって来て、ベジータとの初戦は劣勢。かつてブロリーの強さはベジータを戦意喪失させたほどなのに…。
しかし、闘いの中でみるみる秘められた力が解き放たれていく。
悟空やベジータを圧倒したあのブロリーが目覚めた。
今回の新作が決まった時(まだブロリーが登場すると公表されてない時)、次の映画はサイヤ人の強さの秘密やルーツに迫ると聞いて、期待した。
いつものバトルメインじゃなく、珍しくストーリー重視になるんじゃないかと。
実際、前半は面白かった。
コルド大王の引退によりコルド軍改めフリーザ軍に。
我が子ベジータ王子を上回る潜在能力を秘めたブロリーの存在に嫉妬するベジータ王。
それにより追放されるブロリーと父パラガス。憎悪と復讐。
惑星ベジータの異変を察知するバーダック。
そして、フリーザによる惑星ベジータ消滅と、サイヤ人の全滅…。
これらのエピソードはすでに知られてるエピソードとはちょっと改変されてもいたが(所謂リブート?)、なかなかストーリー的に面白味があった。
悟空、ベジータ、ブロリー、生き残ったサイヤ人が、運命の悪戯か宿命か、交錯する。
ドラマチックに盛り上がると思いきや…、
バトルが始まったら、いつもと代わり映えせず。
ウォ~ッ!ウリャ~ッ!ドリャ~ッ!…と、奇声や唸り声ばかり上げ、パワーアップや変身、掟破りの合体。
それまでちゃんとストーリーで見せていたのに、急に脚本家が5歳児になったんじゃないかと思うくらい安直に。
確かに迫力はあったが、クライマックスの一番のメインである筈のバトルがたるかった。
新キャラでは、ブロリーと交流を持つレモとチライが人間味あるユーモラスなキャラ。こんなフリーザ軍の部下、今まで居なくて新鮮。
でも個人的に気に入ったのは、フリーザ軍に珍しい老婆、ベリブル。おそらくフリーザが小さい頃から世話してきた乳母で、他の部下なら殺されるくらいの事もズケズケ言う。
思ってた以上に話に絡んできたフリーザ。一度死んで蘇ってから、すっかりレギュラーに。“力の大会”では共闘したが、今回はやはり悪い事を企む策士。そうそう、フリーザのあの願い事、叶えてやってもいいんじゃない…?(笑)
悟空とベジータはすっかりボケとツッコミの漫才コンビみたいに。
今回、レギュラーメンバーはほとんどと言っていいくらい登場せず。ま、無駄に登場するよりかはいいか。
それでも欠かせないブルマ。改めて、鶴ひろみさんが亡くなった事を思い出した…。
改変、後付け設定…何でもありの『ドラゴンボール』。
今回もツッコミ出したらキリ無いが、最たるは、ブロリーそのものだろう。
先にも言ったように、以前のブロリーとは全くの別物。
強さもさらにパワーアップしてる設定。
だけど何か…、かつてのブロリーのような圧倒的な強さと脅威を感じられなかった。前作のゴールデンフリーザと同じものを感じた。
また、あまりのキャラ改変にガッカリする人も多いだろう。最後はまるでハッピーエンド的な…?
それから、こんな事言ったら元も子も無いが、ブロリーがこのまま過去キャラになるのが勿体無いくらいの人気キャラである事は分かるが、結局過去の人気キャラをまた引っ張り出して来て、前作『~復活の「F」』の二番煎じ…。
台詞のほとんどが唸り声だった島田敏さんの熱演はお疲れ様でした。
変わらなかったのは、パラガスのヤな奴感だけ。
その最期が、期待してたアレと違ったのは残念だったけど…。
総じて、期待外れな部分もあったし、面白かった部分もあった。
良くも悪くも、いつもの『ドラゴンボール』。
“ブロリー”というタイトルが付けられたが、別のタイトルでも良かったと思う。
戦闘民族・サイヤ人。
闘いの中でさらに強くなり、己を見出だし、進化は天井知らず。
ただ相手を倒すだけではなく、それ以上のものも育む。
ラストシーンの悟空の心の大らかさ。強い以上の悟空の魅力。
色んな意味で、“サイヤ人戦歌”であった。