劇場公開日 2018年10月19日

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「金を使えってか?」億男 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0金を使えってか?

2018年10月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

幸せ

 友人とともに消えた3億円。主人公の一男(佐藤健)は3千万円の借金返済と妻子を取り戻すこと以外に、金の使い道を考えきれないでいた。金じゃ買えないものだってあるという前半のテーマ。知り合ったあきら(池田エライザ)とともに失踪した九十九(高橋一生)を探すために、億男なる知人を訪ねてまわるという展開。

 九十九が運営していた“バイカム”というメルカリみたいなサイトを売却し、億男となった人物(一人は億女か)。競馬場のVIP席を陣取る百瀬(北村一輝)、カリスマ的投資コンサルタントとなって荒稼ぎする千住(藤原竜也)、公営住宅にひっそりと暮らす十和子(沢尻エリカ)といった一癖ある人物ばかりなのだ。一番まともなのは、登場してないが、十和子の夫なのだろう。彼なら襖の裏に隠された大金なんてのも気づかないのかもしれない。まぁ、結婚相談所で出会ったとか言ってたけど、そんな人間なら登録すらしないかもしれませんが・・・(笑)。

 金は使わなきゃ意味がない!壮大なテーマの割には至極当然のような結論付けしかなされてないように感じました。来年、消費税が10%に上がることが予想されるため、不景気に陥ることへの警鐘の意味が込められていたのかも。ただし、何億もの資産を持った人間の言うことは信用する価値はないし、消費増税する政治家たちも二世議員、おぼっちゃま議員がいっぱいいるんだから、理由なんてのも鵜呑みにする価値はない。50歳を過ぎれば(もっと早くからの人もいるが)老後のことしか考えないのだから、その日のための貯えさえあればいいというのが一般的だろう。さすがに還暦過ぎてしまったら「宵越しの金は持たない」なんてカッコいいことも言うのが恥ずかしいと思う。金の価値は人によって異なるんだから、一概にも言えませんが。

 バイカムというサイト運営も、販売者は消費税を納めなければならないが、売上高1000万以下の事業者とみなされるから免除対象。景気が冷え込んだ上に個人売買やオークションが今以上に流行れば、その分税収は落ち込むんで、やがて日本は不景気スパイラルに落ち込むのだろうし、このフリマという設定は考えさせられるし、面白かった。なんたって200億でサイトを売却できるくらいですもんね・・・

 10年前にブログから生まれた『ロト6で3億2千万円当てた男の悲劇』なるTVドラマが放映された。宝くじを扱った映画やドラマはいくつか記憶にあるけど、やはり人間をダメにしてしまう大金。また、2004年の福井県豪雨災害で知事に2億円の宝くじ券を奇特な方が送ったというニュースも思い出しました。この話だけでも涙がちょちょぎれますが、普通ならば映画のように借金だけは返済しておきたくなるものです。

 高橋一生が高座で語る古典落語の『芝浜』という伏線は見事でした。ストーリーの本線そのままとも言えるほどで、楽して稼いだ金なんて・・・と教訓のようなお話。落語研究会といえば、ついつい『花とアリス』を思い出してしまったのですが、百瀬が北村一輝だとは気づかず、あの落研部長の坂本真だと信じていた自分がいます・・・

kossy