「今を懸命に生きる者達」劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5今を懸命に生きる者達

2022年12月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

楽しい

興奮

予想外だったが面白かった。本作は、人気のあるTVシリーズのテイストを土台にしたスピード感ある歯切れ良い展開で、医療ドラマと人間ドラマを融合した邦画らしい作品である。劇場版であることを意識し過ぎて、スケールアップを狙った大味な大事故連発ドラマになるのではと心配していたが、徒労に終わった。

本作の舞台は、翔陽大学附属北部病院救命救急センター。多忙な緊急救命活動の最中に、成田空港での飛行機事故、東京湾の海ほたるでの巨大フェリー衝突事故が相次いで発生し、フライトドクター藍沢(山下智久)、白石(新垣結衣)、緋山(戸田恵梨香)らは、様々な困難に立ち向かっていく・・・。

映画館の大画面を活かした大事故シーンは迫力十分。そこで行われる救命活動シーンは、優れた医師のワンマンショーではなく、医師、看護師などで構成される群像劇であり、緊迫した時間との闘いはリアルであり息を飲む。

救命センターが舞台なので、目まぐるしく次から次へ患者が搬送されてくるが、本作は、それぞれの患者に対する医療行為だけを描いているわけではない。彼らの抱えている問題を丁寧に描くことで、家族愛、親子愛、恋愛の形など、現代社会が抱える様々な問題に迫る人間ドラマになっている。極限状態にある医師、看護師、患者の人生訓のような台詞が心に響く。

本作の主役は山下智久であるが、彼は人生の先達的な役割であり、新垣結衣と戸田恵梨香がメインになっている。主役もでき勢いのある2人だけに、1人のシーンも上出来だが、何と言っても、仲良しでもあり、ライバルでもある2人の、時にコミカルな、時にシリアスな会話、絡み合いが絶品。

本作は、全ての患者を救うことはできないという厳しい現実も真摯に描いている。そんな状況の中で、医師、患者はどう生きるべきかを問い掛けている。今を強く生きることの大切さが伝わってきて涙が溢れてくる。

本作は、娯楽作品ではあるが人生の示唆に富んだ良作である。

みかずき