「『命取りだよ トリだけに』」フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
『命取りだよ トリだけに』
アバンタイトルのクール & ザ・ギャング『セレブレーション』がご機嫌に流れる、フロリダの発色の強い原色の映像が眩しい作品。
テーマは、貧困層、そしてしたたかに生きる子供。正に、アメリカの影の部分を、フロリダの太陽が照らす内容に仕上がっている。
子役の天才的演技力に、ハリウッドの底力がヒシヒシと伝わってくる。果たしてここまでの演技が日本でも出来るのだろうか、正に『万引家族』との対決の様相を呈している演出だ。但し、『万引』との対比で考えた場合、今作はやはりアメリカでの話ということで、実感が湧かないというのが正直な意見。特にお母さんのあの気の強さ、そして子供の悪戯の演出過多は、リアリティに欠けるのではないだろうか。そこがついていけない一つの理由。他のレビューでも盛んに評論している、モーテル管理人の、助けてあげたい意識も、自分が観ると、単なる自己満足に固執しているように感じるのだが。。。 スクリーン一杯に建物を横長に撮す構図等、興味深い絵作りにはなっていたが、ストーリー的には、冗長なところも多かった。
今作品の白眉は、悪戯をしかけた家族の子供の成長なのではないだろうか。主人公の女の子がいろいろな悪巧みや冒険を彼女に経験させることによって、引っ込み思案だった暗さが段々と氷解してゆく。そしてラストの、今までのお礼とばかりに、行ける筈もない、目の前にある“ネズミのの王国”という天国へ誘う、それは多分、夢、幻なのであろう、幸せの妄想を、魔法に掛けたように二人に体験させる、そんなシーンである。『親友』だと告げられた彼女のあの焦点の定まった瞳、今までのフォーカスの合っていない力のない目からの変貌は、まさに“マジック”そのものである。