劇場公開日 2018年5月12日

  • 予告編を見る

「監督の優しい視線」フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0監督の優しい視線

2018年5月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

楽しい

本作が捉える現実は厳しく残酷だ。しかし映画は温かい。ディズニーワールドのあるフロリダ、オーランドは全米屈指のリゾート地だが、貧富の差は激しく、全米平均よりも貧困に苦しむ人の数が多い地域でもある。
華やかなイメージから取り残された人々にスポットを当てる本作は、けれど貧困の悲惨さをことさらに強調しない。子どもの目線の高さから撮られた映像は、美しく楽しさに溢れている。

貧困に不幸を見出すのは簡単だ。しかし、つぶさに観察してみれば彼らは不幸なだけではない。監督は本作のエピソードのほとんどは現地の取材で見つけたそうだ。あの楽しげなエピソードは創作ではない。

だからと言って、残酷な現実から目を背けるわけでもない。このあたりの監督のバランス感覚というか、距離感の保ち方が絶妙だ。

個人的に、今年を代表する1本になりそうだ。心底感動した。

杉本穂高