「善意のリアリティ」ザ・スクエア 思いやりの聖域 ドラゴンミズホさんの映画レビュー(感想・評価)
善意のリアリティ
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善意を行うことの難しさを描いた作品。心がえぐられるような表現があって素晴らしかった。
生きていて自分たちが望むように善意を行うことが出来ない、人は自分たちが考えるより善人にはなれないということを滑稽に描けていて良かった。
●大人であり社会的な立場を持つ主人公が善意を行えると考えていること、その無自覚の表現が良かった。ショボいことがきっかけで
ショボいトラブルを生んで、簡単に自己防衛に走り人への思いやり
を忘れるところが共感できる。
●主人公だけでなく登場人物すべてが善意を忘れる日常人と描いていることが良かった。悪人でもないけど、聖人でもない。人への思いやりもそこそこ…という表現がリアルだった。
●サル男の場面がサスペンスフルで良かった。この映画はいい意味で先の展開が読めなかった。たぶんこの場面は本筋とは関係ないエピソード。そのわりに長い。だけど意図的にこの場面を入れている気がするな。長いけど緊張感があり、思わず引き込まれた。サル男は演技なのか、ハプニングなのかという緊張感で誰も手を出せない、巻き込まれたくないから皆うつむき加減。人間心理の恐ろしさも感じる異色のシーンだった。
●ラストも良かった。主人公は苦悶するが人として成長しないことを予感させる。娘が父の姿から何か学びとるでもなく帽子をかぶるのは、この後も続く日常を予感させる。主人公が人間の象徴であるなら、人本来の限界により善意からは遠いという結びに感じた。
この映画はシニカルなジョークの秀作だと思う。
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