「家族のやりとりに放り込まれる」ハッピーエンド KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
家族のやりとりに放り込まれる
危なっかしいものを孕んだ人間が多く、何か事が起こっても少し置いてきぼりにされつつ何となく最小限に説明されてあとは察する、という流れが幾度も続くので一瞬たりとも目を離せなかった。
分かりにくいことこの上ないつくりだけど面白かった。
基本長回しのカメラとあまりにも自然な演技によって、この家族のやりとりと生活の中にポツンと放り投げられたような感覚になった。
こんなにも近くに感じる映画って今までなかなか出会った事がなかった。
登場人物それぞれ今誰が何を考えているのか一つ一つ想像して後で紐解くのがゾワゾワして気持ちいい。
上っ面でよそよそしい感じの家族だけど、私はここに全く愛が無いとはどうしても思えなくて、自分の中の欲求と苦悩と抑制とのバランスを取りながら何とか生きているような家族の話だと思った。
「愛、アムール」を観ていたらもっともっと感じ方も違ったかも。
おそらく死を望んでいるジョルジュと愛を感じたことのなさそうなエヴが対話するシーンや最後のシーンでなんだかすごく緊張した。
分かり合えてるのかな?とも思ったけど、自分や他人の命を操作する・操作しようとするとき、曇りがあるか無いかでだいぶ違うだろうし。
最初から最後まで特に変わることのないエヴの態度が好き。やっぱりスマホが良いよね。
余白が多いし正直分からないことも多いので観た後色々考えめぐらして楽しめる。
張り詰めた空気がずっと流れているので飽きずにいられたのも良かった。
食事のシーンとアンヌが恋人とさりげなく手を繋ぐシーンがとても好き。
誰にとっても特に幸せではなさそうな終わり方が良かった。
あとは私がフランス語のネイティヴだったら何気ない会話や言葉のニュアンスを正しく受け取れたかもな…