「二度と戻らない、輝いていたあの時代。」マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
二度と戻らない、輝いていたあの時代。
前作よりずっと昔の、世界が輝いていた時代をていねいに描き込むことにより、前作をサンドイッチの具のように挟んだ、凝った構造のミュージカル映画です。
この作品の成功理由は、同時に3人の男に愛され、一粒種の娘を産んだ「母の気持ち」を中心に据え、そこから一ミリもブレなかったところかも知れません。
若かった頃の母を演じるリリー・ジェームズの素敵なこと明るいこと、百点満点でした。
ハチャメチャが許され、輝いていた母の時代と、倫理に縛られ息が詰まる現代の幸せとを対比して見せることで、鮮やかに輝いていたABBAの時代がなお一層引き立っています。
幸せなシーンでも、決して幸せ一辺倒ではなく、そこには過去があり、やがて来る時代の予感があり……と、重層的に描かれているので、底抜けにハッピーな映画であるはずなのに、観ていて涙が不覚にもこぼれそうになるシーンもありましたよ。
それは、過ぎ去ってしまって、もう二度と戻らない時代、本当は決して取り戻すことのできない青春への精一杯のノスタルジーが隠しテーマとして仕込まれていたからかも知れません。
とても楽しめる映画だと感心しました。
なお、どの登場人物も英語の発音が明瞭で分かりやすく、この映画の隠れた美点だと感じました。
ミュージカル仕立てのお蔭でしょうか。
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