「無条件に楽しむだけでいいはずの映画なのに…」マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
無条件に楽しむだけでいいはずの映画なのに…
居場所、ということについて考えてしまった。
リリー・ジェイムスの演じた時代の若者たちだって将来に不安が無いわけではないが、仕事や結婚相手、転職…、というような個人的な選択の問題で済むことだったと思う。だから、自分の身に何が起きてどうなるかはわからないけど、自分で何とかするし何とかなる。と深刻に悲観することなく生きていけた。ましてや世界に自分の居場所が無いかもしれない、という事態までは想像もしていなかった。勿論、誰にとっても居心地の悪い場所はあるけれど、今のままでは将来、自分の居場所がないのではないかという将来全体を覆うような不安を抱えて思い詰める人はあまりいなかったと思う。
ところが、今の若者は生まれた時から『先行き不透明』と言われ続け、学校を出たとしても資格や特技やTOEIC730点(日本で働くのに‼︎)ないと国内ですら生きていける場所(入れる会社)がないかのように脅され、自分の居場所は生きているうちに自然に定まってくるのではなく、他人を蹴落として勝ち取らなきゃいけないかのように刷り込まれている。
もしかしたら、ドナやサムのような人達を道徳的・人格的に否定する発想は、自分の競争相手を1人でも減らそうとする心理が働いているのかもしれない。
世の中がもっと寛容だった時代は、親戚のうちに大概一人くらいはそういう一族の恥⁈みたいな扱いを受ける人がいたけれど、そういう大人は親や学校は教えてくれないけど生きていくのには大事で必要なことを教えてくれる人(寅さんのように)でもあったし、そこが彼・彼女の居場所でもあった。