「前半はやや懈いが、後半は感動的なテーマへ。」マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
前半はやや懈いが、後半は感動的なテーマへ。
前作の映画化から10年後の続編公開。オリジナルキャストがきちんと揃った上での続編には期待感もあった。余計な前情報を入れたくなくてあらすじもほとんど読まずに映画をみたが、冒頭から衝撃の設定。あのドナはもう亡くなってしまったのね。それだけでなく、あんなにお似合いだったソフィーとスカイのカップルも破局寸前だし、なんだか前作の持ち味だった「問答無用で人を元気にさせる」感じが、オープニングからやけに辛気臭くてジメジメした雰囲気。そんな現在のストーリーと並行して若き日のドナの物語が描かれていて、リリー・ジェームズ演じる若きドナの溌溂とした(そしてちょっぴり奔放な)人物像になんとか勢いを感じるものの、正直、前半部分はかなり懈いものがあった。若き日のドナと現在のソフィーの時代の往復も、場面転換の編集にはやたら凝っていてストーリーとしての呼応があるわけではなく、無粋としか思えなかった。「あぁ、やっぱり後から強引に作った続編だから、こんなもんか・・・」という落胆とともに観ていた。
ただ、中盤あたりからオリジナルキャストがギリシャのあの島へとどんどん集結し始めていくのを見ていると、途端にストーリーも画面も華やぎはじめて気持ちが沸き立ってきた。私が単純に前作の映画のファンだからそう感じられるのかもしれないけれど、やっぱりオリジナルキャストが集った時のエネルギーやパワーには特別なものがあると思わずにいられなかった。そして後半で丁寧に描かれていく物語。ドナとソフィーがそれぞれに時代を超えて母となり強く美しい女性となり命のリレーのバトンを受け継いでいくストーリー展開にはとても素直に感じ入るものがあった。そして満を持して登場するメリル・ストリープの存在感。メリル・ストリープ演じる亡きドナと、リリー・ジェームズ演じる若き日のドナ、そしてアマンダ・サイフリッド演じる娘のソフィーという3人の登場人物が崇高に重なり合って、そして彼女たちの想いや願いが、ソフィーの腕に抱かれている新しい命とそれを祝福する人々の中へと積もっていくというとても感動的なシーンで本当に素敵だった。
だからこそ、前半部分の湿っぽさは余計だったと思う。私にとって「マンマ・ミーア!」はとにかく元気をくれるミュージカルだ。「ダンシング・クイーン」を歌い踊りながら旧友を載せた船が島へと近づいてくるシーンや、最後に出演者全員で「スーパートゥルーパー」を歌い盛り上がるパーティーのシーンこそが、私にとっての「マンマ・ミーア!」だ。だから、冒頭でソフィーとスカイをわざわざ仲違いさせる必然性もないし、もっと言えばドナが不在になる必然性だって(少なくとも私にとっては)なかった。
オリジナルキャストだけを誉めそやしていると誤解されそうだけれど、若きドナを演じたリリー・ジェームズの若さ溢れる演技も良かったし歌声も素晴らしく、エネルギーに満ち溢れたスマイルも本当に素敵だった。そしてまた若き日の「ダイナモス」2人がまさしくターニャとロージーそのもので、訛りだけじゃなくて台詞回しや間の取り方まで、クリスティーン・バランスキーとジュリー・ウォルターズのそれを完コピしたみたい!これには思わず感動してしまった!一方、男性キャストの若き日を演じた3人はちょっと存在感不足だったかな?