「再会と分裂、さらにビター&ダークな第2章」ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
再会と分裂、さらにビター&ダークな第2章
『ハリー・ポッター』シリーズの約80年前を舞台に展開されるファンタジー超大作
『ファンタスティック・ビースト』5部作。その第2作が満を持しての公開!
魔法使いによる人間世界の転覆という野望のため、強大な魔力を持つ
青年クリーデンスを懐柔しようと目論む凶悪犯グリンデルバルド。
当代最強の魔法使いであるダンブルドアは、彼の計画を阻止するべく、
魔法動物学者ニュートにクリーデンス追跡を(ほぼむりやり)依頼する。
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まずシンプルに、ニュートたち主人公4人の姿を再び見られるのが嬉しい!
なんだかんだ再登場のジェイコブさんとクイニーはすっかり良い仲だし、
不器用カップル・ニュートとティナもほんのちょっとだけ仲が進展。
普通なら女性に言っちゃいけない「サラマンダー(火蜥蜴)」も、
ニュートの魔法動物への情熱を知っていれば、最大級の誉め言葉。
前作より出番は減ってしまったけど、魔法動物たちもやっぱり楽しい見所だ。
中国の凶暴ドラゴンにゃんこ・ズーウー! でかいし怖いが根っこはネコちゃん。
巨体をうねらせ、黒猫マタゴたちとネコ科目史上最大級のバトルを披露する。
前作で騒動を起こしまくった光り物好きニフラーは、今回は意外な大活躍!
スーパーキュートな赤ちゃんニフラーも登場するが……人に見られると
いつも気まずそうにゆっくり宝石をしまうのは習性なのか(笑)。
海藻のようになびく毛が流麗なケルピーとかも印象的でした。
『ハリポタ』シリーズとの関連がますます色濃くなった点も見逃せない点で、
若きダンブルドア校長の登場はもちろん(お爺ちゃん昔は超イケメンだったのね)、
ホグワーツをまた大スクリーンで観られるだけでもファンの方には鳥肌モノじゃなかろうか。
レトロモダンな1920年代+魔法世界という組合せも相変わらずステキねえ。
前回はNY、今回はパリ、さて次回作でニュート一行はどこへ向かうのか?
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ただ、お洒落で明るかった前作と比べ、今回は物語のトーンがグッと重い。
グリンデルバルドの唱える『魔法使いの為の世界』を巡り、分裂を始める魔法界。
主人公4人をはじめ、兄弟・姉妹・親友・恋人の間で確執が生まれ始める。
そしてダンブルドアとグリンデルバルド、クリーデンスとの驚きの因縁も……。
いやマジで? 本当に実の兄弟なの? まだ何か企んでんじゃないのんグリさん?
世界大戦の勃発を予知し、危険な人間に取って変わると宣言するグリンデルバルド。
純血主義を謳い、不賛同者や障害となる者なら幼い子供ですら無慈悲に殺す
(殺させる)彼の思考は、あの世界大戦を引き起こした独裁者と良く似ている
(J・デップ好演。いつものエキセントリックさを排した冷血で理知的な悪漢ぶり)。
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さて……今回も最後まで楽しんで観られたが、
判定は前作から一段落として3.5判定とさせていただいた。
前述通り、今回は親しい者どうしの確執が発生する展開が連続するので雰囲気が重い。
また前作は、続編を匂わせつつも単品としてピシャリと締める内容だったが、今回は
前哨戦という印象が強く、そこも前作ほどにエキサイトできなかった一因かと。
それよりも……
ジェイコブとクイニーが前作ほど活躍せず、キャラも活きていない点が残念。
前回あれだけ泣ける形でジェイコブと別れたのに、今回は登場時点であっさり
クイニーと相思相愛になってるし、親友ニュートとの再会はもっとあっさり。
あの展開に持っていく以上はしようがないのかもだが……駆け足過ぎない?
ジェイコブが前作より観客目線にいないせいで親近感が薄れてる気がするし、
クイニー嬢がグリンデルバルド側に付く動機も納得いかないんよねえ……。
だってあの演説を聞いたら、ノー・マジのジェイコブさんは少なくとも丁重には
扱われないって考えそうじゃない? グリさんに色々吹き込まれてたのかしらん。
まあ直情的に、前作の主要4人みんな好きなので、あの展開は残念だった。
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しかしながら、流石は映画史上最大規模のファンタジーシリーズ。
描き込まれた魔法世界はどこもかしこもユニークでゴージャス。
クライマックスの青い炎と赤い炎の激突など、ド派手な見せ場もしっかり。
キッチリ次回作に期待を持たせる出来でした。
けどまた2,3年は待たないといけないんだよねえ……。
ニュート達、そして空飛ぶスローモー・ニフラーとも暫しのお別れ。寂し寂し。
<2018.11.27鑑賞>