名前のない女たち うそつき女のレビュー・感想・評価
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底辺だよ、底辺
原作は未読である。でも、多分原作の核となる部分を抜き取ってコラージュしている構成となっているのであろうと想像する。というのもストーリーとしては散漫さがうかがえ、その切り取ったのりしろは自分で埋めろというメッセージを感じたからである。一応、ストーリーの狂言廻し的役柄が吹越満であり、その飄々とした演じ方は正に『的を射た』キャストである。取材対象者をバカにしながらも、自分も又ゲスな人生を過ごしている事の滑稽さを体現していてかなり分かり易い。しかし、それ以外の主役級の女の子、その妹の演出がかなり不安定で新を感じることが出来ない。姉の優秀さを妬み、姉のモノを奪う妹。そんな妹に幼い頃から色々なモノを奪われて、それでも肉親の愛情を棄てきれずにいる姉。それを忘れようと誤魔化し、今の境遇を満足しようとして幸せをアピールする姉。正直、かなり難しい表現を求められる内容に、演技と演出が追いついていないチグハグさを感じてしまった。余りにも姉妹の関係性が薄すぎな演出だからではないだろうか。
多分、アバンタイトルの喉の渇きを収めるために海水を飲むと益々喉が渇く、欲望とはそういうモノという件がテーマなのだろうとは思う。人間は欲望を抑えることができないという手垢の付いた真理を、AVと絡めたのだろうとは思う。ただ、最後の老人ホーム惨殺のニュースや、取材に同行した女ライターの身の上話の件は、蛇足な様な気がするのは私だけだろうか・・・
やっと自分の幸せを手に入れた妹が、その幸せを永遠のモノのするために敢えて自死をするのも、よくある話とはいえ心を掴まれたのだが、その後の伏線の回収が成されない(多分、ブランコで泣いているのが回収なのだろうが)、もっとドラマティックに深く転がしても良いのではないかと思うのだが、そこもまた、のりしろは自分で埋めろってことか・・・濡れ場にももっとエモーショナルが感じられるストーリーの結び付が欲しかった。ペディキュアのついた足を視ると大人と言うことを思い出すシーンも意味深くて良かったのだけど、それも回収が浅く、後もう一歩という残念な気持ちである。
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