劇場公開日 2018年4月21日

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「歴史に対して前向きな対応が好感の持てる映画。」タクシー運転手 約束は海を越えて yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0歴史に対して前向きな対応が好感の持てる映画。

2024年10月19日
PCから投稿

今年378本目(合計1,470本目/今月(2024年10月度)29本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。

 シネマートさんの「さよなら上映」でラインナップされていた作品です。特に最終週(閉館1週間前)は、シネマートがもともと得意としていた韓国映画が多めです。

 この映画自体は「光州事件」を扱ったもので、韓国映画をある程度見る方であればご存じかなと思います。同じ映画のお話でいうと「ソウルの春」の直後にあたります。このあたり、少しでも韓国史を予習しておくと有利かなと思います。

 また、この映画自体も大半が実話であり、作内で登場するドイツ人ジャーナリストが光州事件の実際の写真を多く撮ったことでこの事件の真相がそうそうと国際的に知られ、当時の韓国政府はこれ以降(1980年以降)、真の民主化に入り、1990年以降はこういった事件もほぼ姿を消すようになりました。動かない証拠があり多くの国から批判されたという事情はありますが、この点は他国(後述)とは異なる部分で、韓国は国内で国民が危険にさらされたこうした国内の事件(映画が描くこの事件はもちろん、1990年以降は済州4.3や麗水順天(1948)事件)に対しても調査、補償(ここでは金銭的な補償より、歴史博物館をつくる等、当事者への名誉回復の意味のほうが大きく、当事者も金銭的賠償より「史実を知ってもらうこと」のほうを強く望んでいた)が進んだのも事実で、韓国の歴史を変えたといっても過言ではない事件です(これらのことはエンディングロールでちらっと流れます)。

 結局のところ、この映画は光州事件を扱う以上、ストーリーの展開はある程度読めてしまうし、韓国の負の歴史を扱う以上、「映画として見たとき」娯楽性を求めるような立場だとちょっと「つまらない」部分は多々あると思いますが、韓国史に興味があり映画を通じて理解を求めようとするなら、「南山の部長たち」「ソウルの春」など(前者はもうVOD入りかな?後者はまだかな?)と続けて3本見るのもおすすめといったところです(さすがに「ソウルの春」は最近すぎて、シネマートの「さよなら上映」には入りませんでしたが)。

 日本から見た場合、若干わかりにくい点があるのでこの時代の韓国史について触れておくとよいかなといったところです。また、アマゾンプライムでは吹き替え・字幕版とも(アマプラ会員なら)見ることができるのを確認しているので、「映画館で見たときここってどうなってたっけ?」も補うことができます。

 採点に関しては特段気になる点がないのでフルスコアにしています。

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 (減点なし/各国における負の歴史との付き合い方)

 韓国では光州事件を扱ったこの作品、あるいは「ソウルの春」ほか、ちょっと前だと(これは日本人(厳密には在日韓国朝鮮の方になりますが)による「スープとイデオロギー」があるなど(後者の作品はその趣旨から韓国国内でも放映された)、韓国国内では自国史を「正しく」理解する動きが今では普通です(まぁ、そう書いておきながら「パミョ」は正直微妙なんですが(私のレビュー参照のこと。ネタバレ含んでいるので要注意…。

 日本国内でも、例えば第二次世界大戦における沖縄での戦いや、いわゆる特攻隊に関すること、少し前であれば関東大震災における諸事件等も、資料が残っていないものも集められる範囲で集めて合理的な解釈のもと放映される等、日本も韓国と同じか次ぐほど、自国の歴史にはいわゆる「負の歴史」に対しては前向きではあろうと思います。

 さて、この「タクシー運転手~」は少し前の作品であり、今ではDVD(ブルーレイ)や配信もありますが、これらの提供が一切ない国もあります。中国です。この事件が中国でいういわゆる天安門事件事件を想定させるからというのが理由で、同事件そのものについての思想の取締りが厳しいのはご存じの通り、「想定させるから」だけで(中国からみて)隣国であるところの韓国のこの作品にまで視聴に規制がかかっていたりします。

 このあたりは究極最後は「国(政府)の歴史との向き合い方」といった、個々どうしようもない部分があり、特に思想良心に関しては幅広く保障する国と建前上保障しながらかなりの制約を課す国(その例が中国)とがあり、この映画一つとっても「それぞれの国の自国史に対するとらえ方」が違う点等、色々考えるところがありますね。
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yukispica