「ソン・ガンホの絶望的な表情が素晴らしい」タクシー運転手 約束は海を越えて 和田隆さんの映画レビュー(感想・評価)
ソン・ガンホの絶望的な表情が素晴らしい
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1980年5月に韓国で多くの死傷者を出した光州事件を舞台に、喜劇的な要素をちりばめながらも、次第に胸に染みるドラマにしてしまう韓国映画のレベルの高さを堪能できる新たな良作の一本。
「義兄弟 SECRET REUNION」のチャン・フン監督が、ソン・ガンホと再びタッグを組んでいる。事件の実態を世界に伝えたドイツ人記者を事件の現場まで送り届けたタクシー運転手をソン・ガンホが演じているのだが、彼のための役と思えるほどのはまり役で、飄々として、ズル賢く、無責任そうでありながら、実は子供思いで正義感に熱い父親を演じさせたら右に出るものはいない。
光州で民主化を求める大規模な学生・民衆デモのシーンは迫真に迫り、市民を暴徒とみなした軍が発砲する様を目の当たりにした時のタクシー運転手、ソン・ガンホの絶望的な表情は、「殺人の追憶」「グエムル 漢江の怪物」「パラサイト 半地下の家族」などで見せた表情に匹敵するほど素晴らしい。
実話をベースにしながらも、手に汗握るカーチェイスシーンなども盛り込み、しっかりとエンタテインメントにまで高める作りはお見事。韓国で1200万人を動員する大ヒットを記録したのも納得の笑って泣けるヒューマンドラマだ。
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