劇場公開日 2018年4月21日

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「勇気ある人々の真実のドラマ」タクシー運転手 約束は海を越えて ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0勇気ある人々の真実のドラマ

2020年3月5日
iPhoneアプリから投稿

父子家庭で愛娘を育てるタクシー運転手マンソプ。彼は貧しい生活にピリオドを打つべく、ドイツ人記者を光州まで送るという仕事を受ける。
しかし光州では民主化運動とそれを弾圧する軍の間で激しい戦闘が行われていた…。

以前から気になっていたタクシー運転手を観賞。まさかここまで泣かされるドラマが待っていようとは…。

民主化運動の最中、状況を読み込めないまま巻き込まれていくマンソプ。
彼の目線で見るからこそ、この事件の真相を疑似体験することができる。
マンソプは現地で運動に参加する青年達に触れていく。そして体外的に「危険なテロリスト」と思われていた彼らがどこにでもいる普通の子供だったことを知るのだ。ミュージシャンになる夢を見、自由の為に運動に参加しているだけなのだ。

そんな彼らを知ってしまうからこそ、弾圧され傷つき倒れていく彼らを家族のように思ってしまう。
それまで対岸の火事と思っていた民主化運動の弾圧は、自分の半身を奪われるような痛みが伴うようになっていく。

観客と主人公の目線が一致しているからこそ、この問題の深刻さが身に染みて分かる。

これは遠い昔の話でもなければ、解決した話でもない。今でも思想の監視・弾圧はいたるところで起こっており、絵空事ではないのだ。

こんな重いテーマを扱いながら、面白さもしっかり担保されている。
笑って、泣いて、悩んで、燃えて、癒されて。
エンタメとしての魅力を2時間で無駄なく凝縮しながら、現実に根付いたテーマをセリフではなく"体験"させる事で説く。

映画の特性をフルに活かした名作、ぜひ見てほしい。

ジョイ☮ JOY86式。