「ポスタービジュアルのイメージからかけ離れた重厚な作品」タクシー運転手 約束は海を越えて よねさんの映画レビュー(感想・評価)
ポスタービジュアルのイメージからかけ離れた重厚な作品
舞台は1980年。ソウルでタクシードライバーをやっているマンソプは街のあちこちで起こる民主化デモにイライラ。ノンポリのシングルファーザー。そんな頃光州市で大規模な民主化デモが起こり、軍が街を封鎖していた。日本駐在のドイツ人記者ピーターは宣教師と身分を偽って入国、光州へ向かうために高額の報酬を提示してタクシーを探すが、そこに現れたのがマンソプだった。呑気なマンソプに一刻も早く光州に入りたいピーターは苛立ちを募らせるが、すぐに二人は政府がひた隠しにしている真実を目の当たりにする。
冒頭の人情ドラマにうっかり油断しましたが、中盤から徐々に見えてくる光州の現実、道中で知り合った大学生ジェシクやドライバー仲間のファンらとの温かい交流、そしてそれらを一気に呑み込む号泣不可避のクライマックス、『グリーンブック』がいつのまにか『野性の証明』になったみたいな物凄い映画でした。それもそのはず監督はこれまたアホみたいに泣ける戦争映画『高地戦』のチャン・フン。『シュリ』の昔からずっと韓流トップスターに君臨する名優ソン・ガンホ演じるマンソプが己の使命に目覚めるまでを丁寧に描く人間ドラマを軸に、民主化を巡って無数の命が失われる大惨事を容赦なく抉る演出は凄まじく、やはり韓流映画は邦画の100年先を疾走していると確信せざるを得ない圧倒的な傑作です。
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