「色々教えてくれる映画」タクシー運転手 約束は海を越えて ミーノさんの映画レビュー(感想・評価)
色々教えてくれる映画
タクシー運転手の主人公は男手一つで娘を育てているとは言え、それほど誠実なタイプでもなく、滞納した家賃を払うために他人の仕事を取る。それが実はドイツ人ジャーナリストをソウルから光州へ送る仕事で、ジャーナリストにも彼のデタラメな性格をすぐに見抜かれてしまう。
目的地の光州は学生を中心にクーデターか起こり軍や警察が市民を弾圧していて、ジャーナリストはそれを取材するために危険を知りながら来たのだった。
「デモなどせずに勉強に励め」と学生をたしなめていた主人公も、普通の大学生や市民が軍部に次々と銃を向けられるのを黙って見てはいられなくなる。
ジャーナリストから任務をとかれ、主人公が光州を離れて入った食堂で事実と全く違う軍部寄りの報道を耳と目にし、このままには出来ないと光州に舞い戻る。そんな主人公を見て、最初は彼を信用できなかったジャーナリストも、徐々に信頼するようになり、共に光州の人達を助けなければ、という気持ちになる。
光州の人達がジャーナリストに、この状況を世界に伝えてくれ、と託す気持ちに観客も共感、ジャーナリストの有り難みと、その重要な意義を感じる。
途中、某シリーズ映画を連想させる(観てないけど)ようなカーチェイスがあったり、韓国映画らしいエンターテイメント性も忘れず、ソン・ガンホが生むコミカルな要素もある。
ラスト、ジャーナリストがこんなにも一生懸命にタクシー運転手を探しているのに終に名乗り出なかったのは何故か、と考えてしまう。
ジャーナリストが危険地帯に行って起こったことは自己責任だと言い放つ人達に、是非一度観て頂きたい。