「「チュンソン!」」タクシー運転手 約束は海を越えて いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
「チュンソン!」
『忠誠!』の韓国語発音。軍人が敬礼時に言う掛け声としても使われていて、作品中も何度も台詞がある。
時は1980年5月、日本だと自動車生産台数が世界一になった年代だそうだ。自分は小学生。まだまだ世界で何が起こっていたかなど知る由もなく、毎日のように近くの公園で、ゴムボール野球や、自転車レース、そして、淡い恋心に胸を焦がしつつ、しかしそれとは別に性的衝動に戸惑っていた時代である。海の向こうではそんな時期に、大変な事件が起きていたことを、勿論歴史としては知識にあったのだが、それをこうして作品で鑑賞したことは大変有意義であった。国を守るべき国軍が、その国民をジェノサイドに陥れる。悪夢のような世界を、しかしこれは現実として起こった事実である。その非業を、ジャーナリズムに燃える、しかし幾ばくかの功名心も抱く西洋人が、タクシー運転手と共に克明に記録し、世界へ配信するストーリー展開である。
映像のイメージ、作品の匂いは、きちんと80年代のそれを彷彿とさせる質感で、かなりノスタルジーを感じさせる。その中で、前半オフビート、後半サスペンスとエモーションを施した構成となっている。事実を元に再構成ということだが、演出がかなりの割合で混ざっていると予想されるのだが、しかしその純粋で真面目な作りは、好意を持って鑑賞できる。
ただ、もう少しコンパクトに纏めても良かったと思うのだが、韓流映画らしく、素材のてんこ盛りさはお国柄なのだろう。
幾つも感涙ポイントをまるで罠のように用意してあるあざとさは、しかし実直さ故、それ程不快には思えない。
ご都合主義的なシーンは、あまり強調させず、単純に『バディ』モノだと、再構築して観た方がいいかもしれない。