「ソン・ガンホのほんわかロードムービーかと思いきや」タクシー運転手 約束は海を越えて ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)
ソン・ガンホのほんわかロードムービーかと思いきや
本年度ベストです。圧倒的。
今年に入って「デトロイト」、「ペンタゴン・ペーパーズ」と観て来た私にとってはホップ☆ステップ☆ジャンプのまさにジャンプに当たる作品。
この三作には共通して「真実を伝えようとする信念」を感じました。このような作品が同じ時期に公開され、ヒットしている背景には、やはり現実での報道に関する不満を感じずにはいられないし、映画もやはり人に何かを伝えるメディアであるということを改めて感じました。こういう映画が日本でメジャー作品として観れる日は来るのだろうか。
フィクションではなく現実、この世界と地続きに"今"という現実があって、主人公たちがちゃんと映画の中で生きていると思わせるリアリティはもちろんすごかったのですが(「この世界の片隅に」のように、細かな日常描写にさりげない笑いを挟み込んだり)、クライマックスへと向かって主人公が成長していく王道の展開に落とし込むことによって単なる実話の実写化映画ではなく、誰が観ても楽しめる普遍的な作品をつくることに成功しているように思う。
ただ真実を伝える映画を作るだけでなく、多くの人に見てもらおうという工夫を感じる。そして多くの人に見てもらうことこそが作品中のテーマともバッチリあっている。
ホロコーストを描いた2015年公開の映画「サウルの息子」では、ユダヤ系の人々が真実を伝えようと命がけで色んな手段で情報を伝えていったことにも通じますが、我々が今こうして映画として観るまでの道のりを考えてしまいます。
私に出来るのはこの映画を人に勧める程度。
とにかく、この映画を観れてよかった。
クライマックスのカーチェイスは少しやり過ぎかな?(笑)と思いましたが全然問題なし!
残酷描写に容赦がない韓国映画ですが、やはりあの子のあの顔のアップはつらい。リドリー・スコット作品を思わせる路地裏の煙モクモクシーンなど、画も綺麗でした。
また、娘の靴は伏線として回収して欲しかったです。あれだけ写したんだから最後までやってよ!(笑)
まあそんなことは全く問題にならないくらいの名作です。
シネマート新宿にて観賞。満席、立ち見の大盛況。エンドロール中は誰も席を立たず、終わった後には拍手喝采。最高の映画体験でした。
劇団ひとりに似ている人が何人か出てきます(笑)*最初に光州に向かう予定だったタクシー運転手など