「庶民」タクシー運転手 約束は海を越えて ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
庶民
ソン・ガンホ演ずるタクシー運転手さんが、私を1980年の光州へ連れて行ってくれたので、初めて光州事件の事を知ることができました。
タクシーの運転手さんはお客さんを送り届ければいいだけです。運転手さんには、普通の生活があるのですから、難しいことや危ないことには関わらないで、娘の為に早くソウルに帰った方が良いです。きっと、運転手さんもずっと帰りたかったに違いありません。
そう、運転手さんは政治にも特段詳しくなく、日常生活でいっぱいいっぱいの庶民の象徴。そして、政治なんて良く分からないけど、理不尽な暴力に見て見ぬ振りができない人間の「勇気」の象徴です。
沢山の犠牲を払いながら、沢山の「勇気」に守られながら、タクシー運転手さんが運んだものは、軍事政権に屈しない「人間の尊厳」です。私が当たり前の様に享受している「民主制」「言論の自由」が、実は世界中の犠牲と勇気からもたらされたものだと知った時に、私にはこれから何ができるのでしょうか。
自国の歴史の恥部を堂々と作品にして大ヒットさせてしまう韓国がとても羨ましく感じました。そして朝鮮戦争の終わりのニュースが飛び込んできた日に、光州のタクシー運転手さん、おばちゃん、おじちゃん、おばあちゃん、おじいちゃんのことを思わずにはいられませんでした。隣国での戦争が終わった日とこの作品を鑑賞した日が重なり、今日は人類の未来に夢が持てた素晴らしい日になりました。
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